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輸入CD規制問題はいま、どうなっている?――公取委で懇談会(2/2 ページ)

» 2004年09月07日 22時53分 公開
[渡邊宏,ITmedia]
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 岡田羊祐氏(一橋大学大学院助教授)からは、再販制度と還流防止措置の二つが同時に存在することによって起こる法的な問題点についての指摘がなされた。

 「再販制度に加えて還流防止措置があると、法的には価格維持効果が強化されることになる。そうなると、還流防止措置が、再販制度の下支えをするものとして機能しかねない」(岡田氏)

 この意見には、矢嶋氏が「(レコード業界は)再販制度の下で特殊な利益を得て、さらに輸入権で利益を上積みするような産業構造にはなっていない」と反発。加えて、「実際の運用にあたって、税関がどのような動きをするかを早く決めなくてはいけないという意見には賛成だ」と、小売店団体として、実際の運用に危機感を感じている事を述べた。

 法的な見解については、中山信弘氏(東京大学大学院教授)からも、「洋盤の輸入がストップする、ということは法的にはあり得るし、止めようがない。一度立法されてしまうと、そこから逃れようとする人は何でもするものだ。さまざまな影響を多角的に確認していく必要があるだろう」と、施行の影響がどのような形で現れるのか、慎重に確認すべきとの意見が出された。

 また、中山氏は、国内レコード会社が「海外のメジャーレーベルから“CDの輸入を止めない”という確認をもらっている」と述べている件についても、「日本の業者が何を言っても関係ない。正当な権利として向こうから訴えられた場合には、どうしようもない。日本の団体が保証するような問題ではない」と指摘。

 岸井大太郎氏(法政大学教授)からも、「(海外レーベルから輸入禁止を求めるアクションがあっても、条件を満たしていれば)合法な権利行使なので、独占禁止法による監視対象にならない。しかし、合法な権利行使でも、法律の趣旨に反した権利行使があれば監視対象となる」という意見が出された。

実運用を控えての準備に問題あり――HMVジャパン社長

 「再販制度と還流防止措置を切り離して考えることは難しい」。HMVジャパン社長のポール・ゼデルスキー氏は、世界にも類を見ないCDへの再販制度が導入されている、日本市場の特殊性をそう表現する。

photo 実際の運用に関して不安をぬぐえないというゼデルスキー氏

 「還流防止措置、あえて輸入規制と呼ばせてもらうが、輸入規制に良いところと悪いところがあることは分かっている。アジア市場での販売価格で、日本に還流CDが入ってしまうことは大きな問題だが、法律が悪用されてしまう可能性があることも事実だ。もし、悪用された場合には、価格が上がるか商品の幅が狭くなる可能性がある」

 「そういった懸念があることから、そうした事態を避けるべく付帯決議の付加にこぎつけた(参考記事)。しかし、実運用についての説明が全くない」

 「HMVジャパンでは、12万以上のタイトルを輸入しているが、税関ではどのようにチェックするか決まっていないと聞いている。付帯決議まで決まっているのに、実運用面での整備・準備が全くなされていない。これでは実質的な輸入規制になってしまう。細かな点が決まっていない状態で、施行日を迎えることには危険さを感じる」(デゼルスキー氏)

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