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動き始めた“夢の表示デバイス”――ソニー「SXRD」劇場がある暮らし――Theater Style(2/2 ページ)

» 2004年09月11日 03時00分 公開
[西坂真人,ITmedia]
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 映画鑑賞で重要なポイントとなる「高いコントラスト比」と、テレビには欠かせない「高速応答性」。この2項目は先週紹介したDLPが得意とするところだが、SXRDでもメリットの1つとなっている。

 SXRD搭載70型グランドベガのコントラスト比を見ると3000対1と非常に高く、応答速度も5ミリ秒以下と高速だ。

 「これらのメリットは、非常に薄い液晶セル厚と垂直配向液晶によって生まれる。液晶の応答速度は薄さの2乗に反比例して速くなり、また薄くすることでコントラストも向上する。特にコントラストに関してはこの薄膜化と、基板と垂直方向に液晶分子を配向させ駆動させる垂直配向液晶とを組み合わせることで、3000対1という高コントラスト比を実現している」

photo SXRDの断面図

 この垂直配向液晶の材料は、ソニー独自仕様の素材を採用しているという。

 「一般的に液晶の配向膜にはポリイミドを使用するのだが、有機素材だけに光に長時間当てると劣化してしまう。SXRDでは無機素材の配向膜を使用することで、耐久性を向上させた。無機材料の種類は公表していないが、決して高価だったり希少な素材ではなく、安く買える安定した材料」

 ただし、液晶セル厚を薄くすると製造が非常に困難になるというデメリットがある。直視型の液晶デバイスは液晶セル厚を均一に保つためにガラスビーズなどをスペーサー代わりに使っているが、プロジェクター向けでは1インチ弱のデバイスを100インチ以上に拡大するのでスペーサーが使えない。

 「われわれは液晶にスペーサーを入れずに配向膜を均一に成膜する技術を開発し、ウェハー単位でパネル化する製造プロセスを確立した。これら独自技術によって、2μメートル以下という非常に薄い液晶セル厚をパネル面内で均一にすることができ、高品質なSXRDデバイスの安定した量産化が可能になった」

photo ウェハー単位でのパネル化プロセス

 デバイスを小さく高解像度に作れるというのはコストダウンにつながる。SXRDを最初に搭載したプロジェクター「QUALIA 004」は240万円と非常に高価だったが、SXRD搭載70型グランドベガの価格は1万ドル以下(110万円以下)と、より普及価格に近づいた。

photo

 「SXRDはリアプロTVへの展開からコンシューマに広げていく。ただし基本は“画質第一”。コントラスト、応答速度、メッシュ感のないフィルム画質などをさらに向上させ、ソニーのディスプレイ事業に貢献していきたい」

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