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魅力の色再現に設置性をプラス――映画のためのプロジェクター「TH-AE700」レビュー:劇場がある暮らし――Theater Style(3/3 ページ)

» 2004年10月01日 19時01分 公開
[本田雅一,ITmedia]
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設置性の大幅改善と高い静音性

 AE500は色はいいが、設置性が悪過ぎるという弱点もあった。投射方向を変えるレンズシフト機能を持っていなかったためだ。もちろん、データプロジェクターなどでお馴染みのキーストーン機能を用いれば、電子的に台形補正も行える。しかし、デジタル処理の台形補正は有効な画素数が減るなど画質低下の影響が決して少なくない。特にハイビジョン映像の持つ解像感を可能な限り落とさずに楽しみたいならば、可能な限り本体の傾きを変えずに設置したいところだ。

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 AE700には待望のレンズシフト機能が搭載され、上下方向は投射サイズの63%、左右方向にも25%のシフトが可能になった。設置自由度の高さが特徴のサンヨーやエプソンの製品に比べれば、まだシフト量は少なく、たとえば部屋の左右端に置くといった事はできない。しかし、テーブルの上や背面壁の書棚への設置はとてもやりやすくなっている。

photo 待望のレンズシフト機能が搭載

 もちろん、天井吊りなど部屋内にプロジェクターを常設する場合も、レンズシフトは便利だ。エアコンをよけて壁ギリギリに設置したい、あるいは圧迫感を感じないよう、なるべく天井に近い位置に設置したいといった場合もあるだろう。AE500では天井吊りの場合でもスクリーン上端よりも低い位置に設置する必要があった。

 シフト操作はスティックを用い、上下左右に同時に動かせる。ただ、上下左右を同時に調整できる点では使いやすいが、可動部にダンパーが効いていないため、細かな調整はやや行いにくい。また、左右25%づつのシフトでは“調整”程度にしか使えないという声もあるだろう。この点は今後、さらなる改良が望まれる部分だ。

 一方、光学系では2倍ズームを備えた点も評価したい。最近は狭い部屋でも大画面を実現するため、短焦点の広角レンズが標準搭載される事が多かった。これは良い面もあるが、悪い面もあり、長細い部屋の長辺方向に投影しようとすると、必要以上に画面が大きくなりすぎるという問題があった。しかしAE700には2倍ズームレンズ(他社同等機種は1.5倍程度が主流)が搭載されており、100インチならば3〜6メートルの範囲で投影できる。

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 またややうるさかった先代モデルよりも、騒音もかなり抑え込まれている。ノーマルモードでは多少ファンノイズが耳に付くものの、ランプ光量を抑えるエコノミーモードならば、コンテンツの鑑賞を妨げることはない。ランプ寿命が1.5倍に伸びた点もうれしい。

ブラッシュアップされた画質が魅力

 画質面で言えば、本機は720pのD4パネルを利用した製品の中でもトップクラスに入ることは間違いない。特にフィルムソースにおける色再現の自然さに関してはクラス最高といっていい。加えてやや気になるレベルだった黒浮きも、価格を考えれば十分に許容できるレベルにまで抑え込まれている。また、文中では触れなかったが、SD/HDあるいは入力系統の切り替え時のレスポンス、リモコンに対する反応の良さも好印象を持ったポイントだ。

photo 天面に操作ボタンを配置
photo 照明機能がついたリモコン

 大幅なレンズシフトがどうしても必要という場合はともかく、色、絵作りに対するこだわりがあるならば、是非とも選択肢に加えておきたい製品である。

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 なお、今回紹介したスクリーン投影写真は、以下の条件で撮影を行っている。

  • ホワイトバランス

 映像モードをノーマル、ランプモードをエコノミーに設定し、ホワイト100%の画面撮影。キヤノン EOS D20のマニュアルホワイトバランス機能で、その画面を指定した。このため、ノーマル時のホワイトバランスは合っているが、他のモードはノーマルとの相対的な色温度差で青くなったり、赤くなったりしている。

 実際の目で見る場合は頭の中でホワイトバランスが調整され、実際にはこれほど差を感じないが、相対的な色温度差を表現するため、あえてホワイトバランスを統一して撮影してある。

  • 露出

 映像モードノーマル、ランプモードエコノミー時、スクリーン中央のホワイト100%がカメラ上で90%ホワイトに写る程度(白飛びせず、やや明るいモードに切り替わっても余裕があるように)に露出設定を行った。ISO200、シャッタースピード1/10秒、絞りF5.6に設定。シネマモードなどはノーマル時よりも光量が少なくなるため、露出アンダーになっている。これもノーマルを基準にした相対的な差を表現するための措置として行った。

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