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「仮想敵」と、今そこにあるホームネットワークの現実(3/4 ページ)

» 2004年11月29日 10時07分 公開
[小寺信良,ITmedia]

 機能的には十分なのだが、残念ながらAX300内ではMPEGデータの仕様が独自のSmartVision形式となっているため、ファイル名やサムネイルまではDiXiMから確認することができるのだが、動画の再生ができない。

AX300の「MediaGarage Server」ではファイルとサムネイルが見えるが、動画再生はできない

 もしNECがDLNAベースのホームネットワークに乗る気があるのなら、現行モデルや将来のモデルにDLNA準拠のサーバを載せることは、難しい話ではないだろう。今のところレコーダーでDLNA準拠をうたっているのは、松下電器産業のDIGA最上位モデル「DMR-E500H」しかない。

 だが意外なことに、PCメーカーであるNECにしては、レコーダーのアップグレードには消極的だ。機能的にも技術的にも可能なはずだが、PCライクなアドバンテージを生かしているようには見えず、まるで「売り切り家電」のように扱っているというのは、腑に落ちないところだ。

クライアントに求められる素質

 PCがホームネットワークに存在する利点は、それがサーバにもなりクライアントにもなるというところだろう。さらに言うならば、ディスプレイまで付いて、ワイヤレスLANが使える気軽さ、キーボードやマウスといった柔軟性の高いコントロールデバイスが元々付いているなど、一般のAV機器に比べて利点が多い。

 そしてもちろん、ソフトウェアのアップデートで、比較的に長い期間最先端の機能に追従できる、というところが最大の強みだ。いろいろな規格が過渡期である現時点では、PCはかなり便利な“ネットワークAV機器”なのである。

 だがホームネットワークという姿を描いてみたときに、PCがその中心になるとは思えない。なぜならば、それを操作できる人が限られるし、柔軟であるが故にどうしても不確定要素が大きくなって、管理にかかる人的負担が大きくなっているからだ。これほどメンテナンスに手がかかる製品は、一般家庭にはなじまない。

 その点で可能性があるのが、ディスプレイ装置にDLNAクライアントが搭載されるという方向性だ。テレビがホームネットワークの中心となるという論理は、成り立つように思える。

 では今テレビにこのようなクライアントが搭載されているかというと、残念ながら現時点でDLNA準拠のネットワーク機能が搭載されているのは、東芝「face」のLZ150シリーズだけのようだ。これには「ハイビジョンネットワーク」なんて名前が付いているが、これはDLNAの認証が降りる前に製品が発売されたためで、機能的にはDLNA準拠のサーバにアクセスできるようになっている。

 クライアント側としての発想もなかなか面白く、例えばEPGの番組表を見ながら録画予約するといった機能では、録画先のサーバをテレビ側から指定できる機能もあるという。いつものレコーダーに空きがなかったら、PCに録っておくということもできる。あるいは録画相手はもうレコーダーではなく、NASで十分ということになるかもしれない。

 だがこういったクライアント側の機器に、なかなか他社が手を出してこないわけは、なんとなくわかる。

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