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「仮想敵」と、今そこにあるホームネットワークの現実(4/4 ページ)

» 2004年11月29日 10時07分 公開
[小寺信良,ITmedia]
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 再生装置であるからには、PC並みにいろんなコーデックに対応しなければならないからだ。将来的なものを見据えてソフトウェアで拡張できるようにしておくには、それなりに強力なプロセッサを積んでおかなければならない。そしてまたそんなプロセッサを積んだものが、果たして「テレビ」と言うレベルなのかも微妙なところだ。

 さらにデジタル放送のDRMも、まだ未解決の問題だ。Z150シリーズも現段階では、PCを組み合わせるときには、アナログ放送をセキュリティなしで録画する設定に変更する必要があるなど、本格的な使用にはネットワーク上のDRM規格策定待ちとなっている。

 東芝では過去に、スマートメディアを使ったファームウェアアップグレードで、テレビをデジタル放送対応にした経験があり、今回の製品でもアップグレードに関しては自信を見せている。

ホームネットワークの着地点

 今後ホームネットワークを推進していく上で忘れてはいけないのは、そもそも今までのレガシーなあり方で「あんまり困ってない」という視点である。

 例えば筆者の両親が住む実家のことを考えてみると、テレビはリアルタイムで見て、音楽はラジオで、写真は紙焼きでアルバム整理、というような生活で今まで困ってないのだから、これからもきっとそのままだろう。

 新しいものが普及していくためには、単に目新しいだけではなく、それによってなんらかの不便が解消されるという、「仮想敵」が必要だ。写真はもともと、デジタルでもアナログでも現状のままで不便な点は少ないし、音楽も柔軟な方向性に進みつつある。

 筆者はその仮想敵に、映像、すなわちデジタル放送を持ってくるといいのではないかと思っている。いやコピーワンスしかり、CMカット問題しかり、今や放送は、こういう結論を引き出すためにわざとやってるんじゃないかと疑ってしまうほど、一般ユーザーの仮想敵にふさわしい“悪役ぶり”を発揮しているではないか。

 ホームネットワークによる映像の家庭内ストリーミングは、放送業界も家電業界も双方振り上げた拳の降ろしどころには、ちょうどいい場所だ。ファイルが移動さえしなければ、コピーではなく再生であるという理屈は、既にNHKアーカイブスの「番組公開ライブラリー」のような実例がある。

 米国でいうWinWinWinの状態は、日本ではこういうところなのではないだろうか。

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