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iRiverが狙う“次の一手”(2/3 ページ)

» 2004年12月22日 17時16分 公開
[本田雅一,ITmedia]

デジタル音楽プレーヤーの一般化を示す様々な“兆候”

 遠藤氏はiRiver製品の売り上げ増加に関し、自ら「急激な伸びはAppleのおかげ。テレビ広告をはじめとする大々的な宣伝活動で、デジタル音楽プレーヤーが一般に市民権を得た。これが販売店側にも消費者側にも強く影響している」と話す。

 遠藤氏自身、これまでデジタル音楽プレーヤーの販売に苦慮してきた。グラフィックカードベンダー大手だったダイアモンドマルチメディア日本法人の社長時代にデジタル音楽プレーヤー「Rio」の販売を始めるなど、この分野の草分けでもある。「1998年にMP3プレーヤーが生まれたが、デジタル音楽プレーヤーは低成長にも関わらず参入企業が多く、どこも廃業寸前の状態だった」と話す。

 そのデジタル音楽プレーヤー市場が、やっと一般的な製品へと脱皮する時期を迎えた兆候は、店頭での扱われ方以外にも現れてきている。

 たとえばiRiverの場合、昨年は40%がオンライン販売による売り上げだったが、現在は20%まで落ちた。今後、買い換えユーザーが増えてくれば、オンライン販売比率も再び高まる可能性があるが、店頭販売の比率増加はユーザー層が“マニアから初級者”へ変化していることを如実に物語っている。

 ユーザーサポートの品質も、他製品以上に重要だと遠藤氏は言う。「販売店に対して手離れの良さとサポートの充実を示さなければ、力を入れて販売してもらえない。ユーザーサポートは土・日を問わずに提供する。ユーザーはデジタル音楽プレーヤーに対し、難しそうなイメージを持っている。しかし、ある壁を超えるとむしろ便利であることもスグにわかる。そこで我々は、便利さを実感してもらえるところまで、初級者を丁寧に引き上げる事に力を注いだ」(遠藤氏)

 iRiver日本法人のWebページは、昨年の同時期に比べ10倍ものアクセスがある。その理由は、使い方の説明を初心者向けに丁寧に行っているからだ。特に1万円以下の戦略的な価格を付けた128Mバイトの低価格フラッシュメモリ型は、専用のサイトを設けて手取り足取りの解説を加えた。

 実際のところ、iRiverの成長は遠藤氏自身が言う通り、巨額の宣伝費で市場を盛り上げたAppleに引っ張られ、市場全体が活性化、拡大したことが主因だろう。しかし、デジタル音楽プレーヤーへの市場の流れが明確になったことで、今後はライバルもより強力になっていくはずだ。

 たとえばフラッシュメモリ型の売り上げはほとんど皆無に近かったソニーのネットワークウォークマンも、MP3対応を果たして以降、売り上げが急速に伸びている。今後、iPodがフラッシュメモリ版(iPod Flash)を投入すれば、iRiverが得意としてきたフラッシュメモリ型デジタル音楽プレーヤーの分野で厳しい競争にさらされる可能性がある。

 遠藤氏も「ソニーとの競合は意識している。ソニーはハードウェアとしての品質を高める事に関しての能力は非常に高い。しかし、ソフトウェアや操作性を含めた使いやすさを提供し、ユーザーの超えなければならないハードルをいかに下げるか、ワークフローのシンプル化が競争する上で非常に重要になる」と話す。

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