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いよいよ始まるスパムメールへの反撃(2/3 ページ)

» 2004年12月27日 11時28分 公開
[小寺信良,ITmedia]

 これらのスパムメールが友達を装ったり会員を装ったりするのは、「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」、いわゆる「特定電子メール法」に定められている表示義務を守らないための言い訳である。いわゆる広告メールには「未承諾広告※」という文字を付けなければならないというアレだ。

 この法律が施行されて既に2年余り経過したが、筆者の経験からすれば、逆にちゃんと「未承諾広告※」と付けたメールのほうが珍しいぐらいだ。しかもそのメールは大抵大手企業からのキャンペーンのお知らせだったりして、筆者にとっては必要なものであったりするから話がやっかいだ。

 さらにこのアドレス宛のメールをケータイなどから読むときには、全部のスパムをダウンロードするハメになる。これ以上スパムが増えて通常のコミュニケーションも滞るようになってしまったら、メールアドレスの変更を余儀なくされるだろう。

 個人事業主には、自分のドメインを取ってアドレスを取得している人も多い。せっかく自分の宣伝のために取得したアドレスが、スパムの嵐にさらされて役に立たなくなったとしたら、こんな報われない話はない。

期待される法的措置

 スパムメールは、産業的な面から見てもマイナス面が多い。特にプロバイダーやサーバを運営している会社は、膨れ上がったスパムメールを処理するだけで、相当の設備増強を強いられる。また大量のスパムメールのせいで必要なメールの遅延やサーバダウンといったことが起きれば、社会的損失も大きい。

 そしてこれを法的に規制するという意味合いで2002年7月から施行された「特定電子メール法」だが、結果的にはほとんど無力であった。実際にスパムメール送信者に対して措置命令が下されたのは、法律が施行されて2年以上経過した現在も、たったの3件しかない。法的には、措置命令が出たあとでも違法メールを送信し続けた場合は、50万円以下の罰金刑が科せられることになっているが、罰金刑は皆無だ。

 これほどまでに効力を発揮できない原因は、2つの理由が考えられる。一つには、スパムメールは発信者の特定が難しいことだ。当然発信者の部分を詐称してあるし、オープンリレーサーバを経由して送信経路をごまかしたり、どこか管理の緩いマシンにワームを侵入させて発信したりするからだ。

 もう一つは、措置命令に至るプロセスに即効性が欠けることだ。違法送信者に対して措置命令が下るまでは、まず違法メールの受信者から「迷惑メール相談センター」への情報提供が行なわれる必要がある。その後、総務省から違反者に対して警告メールが発せられる。むろんこの段階で送信者が確定できなければ、メールの出しようがないわけだ。

 仮に送信者が特定できたとしても、この警告を無視して送信を繰り返した場合に、ようやく措置命令が下る。そして罰金刑という形の刑事罰というのは、この措置命令を無視してさらに送信を行なった場合に適用される。これではどう考えても総務省からメールが来た段階で、別のプロバイダーなどに乗り換えて行方をくらましてしまうのがオチだ。

 これじゃあダメだということで、来年の法改正へ向けて今年10月には総務省が主体になり、有識者による「迷惑メールへの対応のあり方に関する研究会」が発足した。悪質業者に対する罰則を強化した改正法案を、次期通常国会に提出するという。12月24日には、この研究会が現時点での対応のあり方をまとめた「中間とりまとめ」が公開された。この内容がさらに煮詰められて、改正法案に盛り込まれることになる。

 これによると、新しい法案への骨子は2つ。法の適応範囲を広げることと、罰則を強化することだ。

やれることをやれるところから

 今回の「中間とりまとめ」を見て初めて知ったのだが、実はこの特定電子メール法は、SMTPで送信するもののみを対象にしていたのだ。つまり、ケータイのキャリアが提供するショートメール、SMS、ライトメールといった類のメールは、規制対象外だったのである。

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