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接近する音楽とIT――2005年はどうなる?(2/2 ページ)

» 2005年01月05日 12時47分 公開
[渡邊宏,ITmedia]
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 レコード会社各社もメガヒットCDのみに収益を依存する構造を改革しようとしており、昨年後半にはCD発売前に音楽配信サービスや携帯電話から楽曲を提供開始したり、DRMの設定変更を行い、提供した楽曲のCD書き込み(CD-DA化)を許可するという動きが見られた。CDパッケージという形態のみでの流通に、レコード会社側自体が限界を感じているが故の行動といえるだろう。

第2、第3のスタイルは定着するか――05年のキーワードは「一般化」

 技術的な面でいえば、昨年10月に音楽配信サービスのストア機能を搭載したWindows Media Player10の提供が開始され、Windows環境ならばより気軽に楽曲の購入が可能になったことも大きなトピックだ。呼応する形でポータブルプレーヤーも数多く登場し、ソニーからは「ウォークマン」の名前を冠した製品(NW-HD 1/2/3)も登場した。

 音楽配信サービスの利用については、WMPでもiTunesでも基本的には“楽曲を1曲(もしくはアルバム)単位で購入する”という形になっている。が、2005年はそれ以外のスタイルを利用する音楽配信サービスが注目を浴びそうだ。

 まずひとつが、曲を所有することに代金を払うのではなく、一定期間の利用に対して代金を支払うサブスクリプション型。サブスクリプション型のサービス自体は2001年にサービスインしたRealOne Musicにそのルーツを見ることができるが、先日発表されたアイリバー・ジャパンのポータブルプレーヤー「H10」は米MSNやNapsterが提供しているサブスクリプション型サービスに対応しており、レンタルCDを持ち運ぶ感覚で利用できる。日本でもこうしたサービスが提供開始されることになれば、注目を浴びることになりそうだ。

 もうひとつがrecommuni(レコミュニ)のようなSNS(P2P)型。recommuniは会員が好きな曲をサーバにアップロードし、また、自由にダウンロードすることができるP2P型の有料音楽配信サービスで、会員が曲をアップロードすると運営側が楽曲権利者に対して配信可能かどうかを確認し、許可が取れた時点からダウンロードが可能になる。

 recommuniは配信楽曲についてDRMフリーをポリシーにしており、そのため、会員になるには、誰かしら既存会員の紹介が必要というSNSの仕組みを利用している。ユニークな点を数多く持つために、“CDのデータだけ販売”というニュアンスが色濃く残る既存の音楽配信サービスと同等に評価することは難しいが、ネットを利用した新たな音楽流通のスタイルとして評価される可能性を秘めている。

 いずれも「音楽を所有する」ことに重点を置いたこれまでサービスとは異なり、「音楽を聴く」ことにより重点を置いたスタイルとなっている。配信サービスを利用する目的そのものが「音楽を聴くこと」にあることを考えると、使い勝手や提供される曲数、サポート機器などの環境次第では大きな躍進が期待できる。


 2005年の最も大きなトピックとして期待されているのはiTMSの日本上陸だが、オリコンが計画したチャート連動型配信サービスと同じく、いつから開始されるのかはいまだ不透明なまま。それにiTMSがブレイクする要因にもなった低価格性(1曲99セント)についても、日本国内サービス開始時に同レベルの低価格性を保てるかは不明だ。

 「正直、1曲150円でも採算的にはギリギリ」

 レーベルゲートの長嶺氏がこう述べるように、サーバやストレージなどに設備投資を繰り返していかなければならない以上、音楽配信サービスのみで採算を得るためにはある程度の価格設定が要求されてしまう。

 しかし、「欲しい曲を欲しいときに」というユーザー主導の流れがさらに強まれば、1枚3000円という国内新譜に見られるような横並び的なマーケティング手法は自然と整理され、より市場原理に沿った音楽市場が実現する可能性がある。その引き金になるのは「ネットで音楽を買う」行為の一般化といえるだろう。2005年、どこまで「ネットで音楽を買う」ことが一般化するか、注意深く見守っていきたい。

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