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着々と進むマイクロソフトの家電戦略、しかし日本市場との乖離も2005 International CES(3/3 ページ)

» 2005年01月07日 00時40分 公開
[本田雅一,ITmedia]
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 そんなやりとりの中で、ゲイツ氏はWindows XPは変化し、家電と関わりのあるさまざまな技術に投資した結果が実りあることを紹介。前述したように、マイクロソフトはコンシューマーユーザーへの約束を果たしていることを一貫してアピールした。

 確かに(その前進の速度に対して批判するひとはいるだろうが)、マイクロソフトの主張は正しい面も多い。おそらく明日からの展示会では、ブース内のいろいろな場所で、その“成果”をアピールすることになるはずだ。

 ただし、日本のユーザーに対してそれらの主張が届きにくいのは、日本においてMCEが全く普及していないからに他ならない。MCEを前提に機器との連携やホームネットワーク、コンテンツサービスとの連携を語られても、今ひとつピンと来ないというのが、日本に住んでいるPCユーザーの率直な感想だろう。

 たとえば昨年リリースされたMCE 2005は、流れるようなユーザーインタフェースもさることながら、内容の濃いEPGやツインチューナーサポート、PVRとしての機能性やレスポンスの良さなど、メーカーが独自に実装しているテレビパソコン用ユーザーインタフェースよりも優れた面が多かった。

 “餅は餅屋”というが、やはりソフトウェア専業でここまで成長してきたマイクロソフトだけに、システムとしてソフトウェアを練り上げ、さらにネットワークを含むさまざまな技術や標準を統合していくノウハウには長けている。

photo MCEと周辺機器、サービスとの連携をデモンストレーション

 だがMCEが普及していない日本には、マイクロソフトがコンシューマー市場に今、もっとも力を入れているところがほとんど伝わらない。冒頭、日本におけるコンシューマー市場でのマイクロソフトの存在感が薄れてきているのでは? と書いたのも、そうした背景によるものだ。

 もちろん、日本でもMSNのコンテンツやサービス充実に力を入れ、音楽配信サービスも開始するなど努力の後は多数見られるが、核となる製品が普及していない点は不利だ。ゲイツ氏のコンシューマー市場向けビジョンと日本市場の乖離が、各PCベンダーの独自性や競争力の強化へと繋がるのか、それとも世界の中で日本が取り残されるのか。さまざまなストーリーがあるだろうが、短期的には日本のPC市場に停滞感を生んでしまうかもしれない。

 オブライエン氏に今後のビジョンについて訊かれたゲイツ氏は、「今後、プロセッサのパワーは2倍になり、ストレージも2倍程度に増えるだろう。さらに電話やテレビなどとの統合もさらに進んでいく。好きなコンテンツを自由にPCで扱えるようになり、使いやすさ、カスタマイズ性の向上などさまざまな進化を遂げるはずだ」と話した。

 「祖父母が孫の様子を見るためにネットワークサービスを使うようになるためには、もっと簡単でシンプルなシステムになる必要があるが、2005年は、そうしたさまざまな可能性が見えてくる。この10年が勝負だ。ビジョンを持っている会社なら、やり遂げることができるだろう。われわれも自分たちの製品において、新しいデジタルの10年に取り組んでいきたい」(ゲイツ氏)。

 しかし、ゲイツ氏のシナリオと日本のPC事情とが離れていくのであれば、今以上にマイクロソフト製品とコンシューマーの気持ちは(日本において)すれ違うかもしれない。テレビパソコンにおけるマイクロソフトのOS支配を望まない日本のPCベンダーとマイクロソフトの綱引きの結果、市場はどこに向かうのだろうか?

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