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ソニーブランドをさらに高める“Like no other”戦略米国市場に見る“テレビのこれから”〜後編〜(2/2 ページ)

» 2005年01月19日 17時16分 公開
[本田雅一,ITmedia]
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流通寡占への対応がカギに

 ブランディング戦略と共にソニーが直面しているのが、米流通大手との付き合い方だろう。米国では特定の巨大流通企業の寡占が進み、流通側の発言権が極端に強くなっている。流通との付き合い方は米国市場を考える上で、非常に重要だ。

 「米国の流通が変わってきたのはここ数年です。最大のBest Buyを筆頭に、Circuit City、Wal-Martなど上位5社で全流通の60%が押さえられている上、さらに整理・統合が進み巨大流通がさらに巨大になっていくでしょう。その大手流通企業が最近、最大のライバルと捉えているのは、実は同業他社ではなくDellです」

 「Dellが家電製品の扱い品目を増やしていくと、それまで流通から購入していた商品が流通を通らなくなります。そこで大手流通企業は、中国や台湾の企業と組んで流通ブランドの製品を安価に提供する手段を取るようになってきました。自分たち自身がDellのアプローチを取り入れることで対抗しようというわけです。その影響で、ブランド力の低いベンダーの製品は閉め出されています。もしこの動きがエスカレートしてくるようになれば、新たな不確定要素として我々にも大きな影響を及ぼす可能性もあるでしょう」

 「そこで我々も直販戦略は重視し、ソニースタイル(オンライン販売サイトでもあるが、米国ではソショールーム的要素も兼ねたソニー直営店として展開している)を全米に15店舗展開しているほか、オンライン販売にも力を入れています。米国でもトップ60以内の高級モールを中心とした出店で、年内には30店舗まで増加する見込みです。ソニースタイルでの販売価格は正価のため、大手流通の方が安価なのですが、それでもソニーから直接購入したいとして買っていく顧客も多く相当な売り上げを出しています」

 HD化をキーワードにテレビ市場の拡大が注目されているが、では実際にどの程度の製品がHD TVになっているのかも気になるところだ。

「おおむね60%以上はHDTVになっています。これは全米の様々なところで、HD放送の良さをアピールするマーケティングプログラムを大々的に展開したのが功を奏したと思います。また9.11事件(同時多発テロ)以降、外出や旅行を控えて自宅で余暇を過ごす時間が増えたことも、テレビの依存度を高めることに繋がっています」

 昨年から注目されているリアプロTVに加え、薄型のプラズマテレビの認知度もかなり上がってきた。ソニーは大型はリアプロTV、中型以下は液晶テレビを押し出しているが、プラズマテレビをソニーはどのように見えているのか?

 「北米におけるプラズマテレビとリアプロTVの出荷は、ほぼ同数と見ていいでしょう。しかし販売開始からの立ち上がりのスピードは、圧倒的にリアプロTVの方が速い。北米市場の特徴を考えれば、今後の主流はやはりリアプロTVではないでしょうか」

北米でのレコーダ市場

 話の方向を変え、北米でのレコーダ市場についても話を聞いてみた。ソニーが推進しているBlu-ray Disc事業はHDTV録画機が先行しており、その普及には家庭でのHDTV録画ニーズの喚起も重要だろう。

 ところが北米での録画ニーズはTiVoに代表されるHDD録画によるタイムシフト需要が中心で、日本のようにDVDに録画してライブラリ保存するユーザーの割合は非常に少ない。ハリウッドを中心としたセルビデオコンテンツが光ディスク事業の中心であるため、光ディスクへの録画を市場として拡大するのは難しいとも言われている。

 「米国ではTiVoの存在が大きく、録画機のニーズ喚起は難しい面があります。たとえばEPG(電子プログラムガイド)の形式がCATV会社によって異なるといった面もあります。さらにはCATVのセットトップボックスに録画機能を内蔵させるなど、放送事業者が使う機材の中に入り込まなければ録画機として普及しにくい。このような問題を解決し、汎用の録画機が使いやすくなるよう、業界で今話し合っているところです」

 もっとも大きな問題は、やはりセットトップボックスがほぼ必須の状況になっていることだ。たとえばDVDレコーダを購入しても、日本のハイブリッドレコーダにあるような豊富な機能なあまり役立たない。外部入力端子にセットトップボックスを接続する必要があるため、内蔵チューナーを用いる場合ほど放送コンテンツと連動した機能の実装は難しくなるからだ。

 「我々は北米ではスゴ録シリーズを販売していません。セットトップボックスとの完全な連携が行えないと、製品としては不完全になってしまい、結果としてユーザーからの不満・クレームが増大してしまうからです。実際、北米でのDVDレコーダの返品率は高いと聞いています。北米でもタイムシフト目的で録画するユーザーは多いですから、録画ニーズそのものは日本と同じぐらいに存在するでしょうが、単独の商品として普及させるには何らかの工夫が必要になるでしょう」

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