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“リビングシアター”構築のポイント劇場がある暮らし――Theater Style(2/5 ページ)

» 2005年01月21日 21時28分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 音質を揃えるとか、マルチチャンネルの音楽も楽しむなんてことを考えると、フロントと同じスピーカーを全部並べる方が音質的には有利なのだが、部屋全体の空気のボリュームを考えると、トールボーイを並べていくのは予算的にも配置的にも無理がある。というわけで、我が家でもリアスピーカーは小型のものを使ったわけだ。

 単純に迫力だけであれば、サブウーファーさえあれば十分に映画的な低域の量感を演出することはできるから、オーディオ好きというわけでなければ、一般的なホームシアター用サラウンドパッケージから始めるのもいい。

サラウンドスピーカーの選び方と配置

麻倉氏:「本田さんのところは、ソニーTA-DA9000ESの9.1チャンネル駆動でスピーカーコードを天井裏配線してスピーカー自身も天吊りしているわけですが、上に配置したというのは映画用途を意識しての事ですか?」

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 我が家の場合は、元々天井の高さを合わせる工事が必須でAVラックも建て付ける。だからケーブルは最初から天井を通すつもりでしたが、やっぱり重視したのはリビングルームとしての機能。家事動線を邪魔するようなスピーカー配置は認められない。だからこその天吊りだったのだが、意外にSACDマルチチャンネルもいい感じだ。リアを演出的に使うのではなく、間接音を中心に音場再現に使っている音楽ソフトは、むしろ上の方(天井付近)にあった方が雰囲気が出る。

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麻倉氏:「映画でも方向感付けるためにサラウンドスピーカーを使うケースは意外に少ないものです。一番大切なのは雰囲気を演出する間接音。しかし間接音が近くで鳴っていると、これは不自然だったりするわけです。距離情報をAVアンプに入力してディレイタイムを付けても“近くで鳴っている感”は避けられないため、リアスピーカーとの距離を可能な限り取るのがポイントですね。天井から吊ると物理的な配置の自由度が高まるうえ、距離も取りやすいというのはあるでしょう」

 実際に置くとなると、小さなスピーカーでもリアスピーカーを設置するのはとても大変。だからこそ、スッパリと楽にスピーカーを配置できるように、天吊りにはコストをかけてもいいと割り切った、というのが本音のところだ。

 また実際にサラウンド環境を作る前は“リアスピーカーって、たいして多くの音が出てないから適当でいいだろう”と思うものだが、実際にやってみるとサラウンドスピーカーの配置と性格がマルチチャンネル音声を楽しむためのポイントだとわかってくる。特に視聴位置から各スピーカーへの角度はシビアで頭の位置の少しのズレで音場感が大きく変化してしまう。

 その点、9.1チャンネル配置は比較的寛容。もちろんスイートスポットはあるが、適当に分散配置しておけば、それなりに自然な音場ができあがる。

麻倉氏:「映画館は大きな劇場ならば、片側サイドに20個、後ろ10個とかあるでしょう。音場全体で音がとぎれない構造にするためです。お金を取る映画館は、音がきちんと繋がって、どんな位置でもそれなりに音場ができていなければならないからです。DVDには、その映画館向けに作った音が入っていますから、実は9.1チャンネル配置はとても有効ですね。また、リアに低域がバンバン出るスピーカーを持ってくると立ち上がりが遅くなって具合が悪い。タイトで立ち上がりの良いスピーカーが向いています。僕も本田さんと同じLINNのUNIKを使っていますよ」

photo LINNのUNIK

 僕がLINNのUnikを使ったのは、施工とインストールをLINNの代理店でもあるサウンドクリエイトに依頼したからという理由もあるが、それ以前に方向感や存在感が希薄で拡がりのある自然なサウンドを出すUnikが、サラウンド向きだと思っていたからだ。実はUnikの特性を確認するためにサウンドクリエイトを訪問し、そこから話が拡がってインストールを依頼したという経緯がある。

 サラウンドスピーカー選びのポイントは、存在感や方向感。これに尽きるような気がする。もちろん、フロントスピーカーとの馴染みも必要だ。前と後ろの音色があまりに違うと違和感のある音場ができあがってしまうからだ。

麻倉氏:「その点、LINNのスピーカーというのは、どれを取り上げてもクセがなくて、他のスピーカーに混ぜてしまっても気にならない。個性の少なさがサラウンド向きと言えますね」

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