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ビデオカメラの現在、そして未来(2/3 ページ)

» 2005年01月24日 15時16分 公開
[小寺信良,ITmedia]

 日本ではまだ火が点いた感じはあまりないDVDビデオカメラだが、米国ではソニーが大々的にテレビコマーシャルをうっており、認知度、売り上げともにかなり良好な状態にある。

 もちろんDVカメラよりも機能比で言えば100ドルから200ドル割高な商品ではあるのだが、コストパフォーマンスにシビアな米国市場でも、利便性の面で割が合うと判断されているようだ。DVDビデオカメラの米国シェアでは、ソニーが7割弱という非公式データがある。

 今年3月に発売されるソニーのDVDハンディカムシリーズは、DVDメディアならではのアドバンテージをフルにつぎ込んでいる。その一つは、16:9のワイド撮影だ。

photo 3月発売のソニーのDVDハンディカムシリーズ

 もともとDVDは映画コンテンツの記録メディアということで、フォーマット内に最初から16:9が規定されている。DVDが楽しめる環境=ワイドテレビという状況は、DVDビデオカメラのワイド化へ自然につながっていく。そしてダメ押しは、カメラの液晶モニタを他社に先がけていち早くワイド化したことである。

 従来のDVカメラやDVDビデオカメラでも、ワイド撮影はできた。だが液晶モニタが4:3サイズであるため、ワイドモード撮影時の画面は、上下に黒が入るレターボックスか、スクイーズ表示しかできなかった。これでは「標準は4:3で16:9はイレギュラー」というイメージにしかならない。だが液晶モニタがワイドなら、多くの人がワイドモード撮影を標準状態として使用することだろう。

 もう一つのアドバンテージは、サラウンド音声収録だ。最上位モデルのDCR-DVD403では、ビルトインマイクで4ch収録を可能にしているほか、下位モデルの一部では新たに開発したアクセサリシューに専用サラウンドマイクを装着することで、同じく4ch分のサラウンド収録ができる。

 以前、DVカメラのHC1000というモデルで、いち早くサラウンド収録に対応したソニーだが、DVというフォーマットの縛りから、4chの収録は音声を12bitに変更する必要があった。

 だが記録メディアがDVDであれば、ドルビーデジタルにエンコードすることで、最初から16bit 5.1chの収録が可能である。サラウンド収録可能なDVDハンディカムでは、4ch収録したオーディオから5.1chを作りだし、それをそのままドルビーデジタルで記録している。

ビデオカメラはどこへ向かう?

 ソニーの重要な戦略の一つが、コンシューマーのフルHD化にある。その一環として、1080iで記録するHDVカメラ「HDR-FX1」が誕生したわけだが、これ1台でHDVフォーマットを席巻してしまった感がある。今年は当然もっと小型でリーズナブルな価格のモデルが出てくることだろう。

photo ソニーHDVカメラ「HDR-FX1」

 HDVの特徴は、良くも悪くも記録メディアがDVテープであるという点である。新メディアのライセンサーとしてのうまみを知り尽くしているソニーにしては、従来メディアを使うHDVフォーマットにそのまま乗ってきたのは意外だったが、ユーザーにとってはカメラ本体さえ安くなれば、抵抗感は少ない。普及に時間はかからないだろう。

 つまり映像ベースでビデオカメラの流れを見ていくと、SD 4:3 → SD 16:9 → HD 16:9となっていくのは必然で、DVカメラやDVDビデオカメラでのWide撮影は、大きな流れの中では過渡期であるという見方もできる。すでにSD 4:3のエリアでは、デジタルカメラのムービー機能が台頭して来ている。ビデオカメラ業界としては、動画専門ハードとして少しでも上に逃げておく必要があるわけだ。

 そしてソニーは、過渡期も含めた全分野で、現在のところトップシェアを独走していることになる。

 その点パナソニックは、メディアにしても映像フォーマットにしても、思い切った割り切りの戦略を取っている。

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