ITmedia NEWS >

ホログラムは“夢の次世代メディア”か?(2/2 ページ)

» 2005年02月04日 18時55分 公開
[渡邊宏,ITmedia]
前のページへ 1|2       

民生機器には使用されない?

 オプトウェアの提唱する方式ではCD/DVDと同じく直径12センチの円形メディアを利用し、同社では「当初は業務用、いずれは民生機器への搭載も目指す」としている。一方、日立マクセルの開発する方式では13センチのメディアを利用する。

photo カートリッジに収められた日立マクセルのメディア。暫定的に5インチMOのカートリッジを利用しているため、シャッターを閉じてしまうとMOそのものに見える

 このメディアは直径13センチ、厚さ3.5ミリ。記録には波長407ナノメートルの青紫レーザーを利用する。メディアそのものは光に弱いため、遮光性のあるカートリッジをあわせて利用する。現在はサンプルメディアが完成した状態であり、共同開発を進めるInPhase(ドライブ側の開発を担当している)でのテストが行われている段階だ。

 2006年中に実用化を目指す第1世代製品の容量は200Gバイトで、2010年には1.6テラバイトを実現するという。しかし、このままでは多重化の方式はもちろん、物理的な違いからもオプトウエアらの推進する方式とは互換性がなくなる。しかし、今津氏は「それでも構わないのでは」と言う。

 「ホログラム記録技術については、議論も実証も不足している段階なので、まずは製品として形にすることが先ではないかと考えています。これまで実用化されていなかった技術なので、形にできるだけでも大きなインパクトになります。実験レベルではテラバイトを実現していますので、まずは製品化し、その後に練り上げていくことが必要だと思います」(今津氏)

 今津氏が想定しているのは、現在AITやDLT、LTOなどの磁気テープが使われている、業務向けアーカイブメディアとしての利用法だ。

 「CD-RやDVD-Rなどと同じ(民生機器の)層は狙いません。まずはニッチ/ハイパフォーマンスの分野を狙うことになります。例を挙げるならば、磁気テープの市場です」(今津氏)

 オプトウエア自身は昨日2月3日の説明会で、2006年中に業務用途向け、2008年頃に民生機器向けというスケジュールを明らかにしているが、民生機器を明確に視野に入れるか入れないかで両者のスタンスは異なっている。

 同社を含む6社(オプトウエア、CMCマグネティックス、東亞合成、日本ペイント、パルステック工業、富士写真フイルム)の推進するホログラム記録規格であるHVD(ホログラフィック・バーサタイル・ディスク)は2006年中のISO標準化を目指しており、HVDの標準化/商品化の促進と普及を目指す「HVDアライアンス」も設立されている。

 日立マクセルとしても民生機器市場を視野に入れていない訳ではないが、「ドライブとメディアを今年のNAB(全米放送機器展)に展示するかもしれない」と話している。NABは名前の通りプロ向けの放送関連機器が多数出品される展示会で、HDカメラ向けのストレージとしてアピールしたい意向が伺える。


 HDでの放送が一般化すれば、現在のDVD(4.7Gバイト)では十分な録画時間が確保できなくなるのは既に指摘されていることだが、DVDの次に主流になる民生機器向けメディアがBDになるのかHD DVDになるのかは、まだ分からない。

 もしBDが定着すれば30Gバイト近い容量のリライタブルメディアが普及することになるが、ホログラム記録技術におけるリライタブルは各社共に開発・検討を進めている段階で、登場時期は全く分からない。こうした事情を勘案すると、いくらホログラム記録技術がケタ違いの容量と転送速度を実現するとはいえ、民生機器向けには「BD/HD DVDで十分ではないのか?」という声が上がってもおかしくない。

 大量生産が開始されれば改善されるとはいえ、メディア(記録素材)もまだ比較的高価であり、コスト削減には欠かせないカートリッジレス化に至ってはオプトウエア/日立マクセルともに想定していない。また、ドライブの小型化についても大きな進捗はみられていないようだ。

 「まずは形にすること」と今津氏は何度かその言葉を繰り返したが、未だ確固たる形を見せていないホログラム記録技術については、まずは「製品」として登場することが望まれている。そう考えると、民生機器への利用については、その「形」が見えてから、ということになりそうだ。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.