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エアチェックの本質麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(3/4 ページ)

» 2005年02月28日 12時53分 公開
[西坂真人,ITmedia]

――記録メディアの進化がエアチェックに与える影響も見逃せませんよね。

麻倉氏: 私のハイビジョン放送のエアチェック環境も、テープのD-VHSからディスクのBlu-ray Discに移行してずいぶん便利になりました。頭出しや好みの場所へのインデックス挿入が簡単になり、観たいと思ったときにすぐに再生できる環境が整ってきたのも大きいですね。テープは経年で劣化します、アナログでは画質もそれほど高くない。なにより、レコードしかりLDしかり、テープよりもディスクの方がコレクションの形態としてふさわしいのです。

photo ハイビジョン放送のエアチェックは、ソニー&松下のBlu-ray Discレコーダで

 HDDを使った映像サーバ的な使い方も提案されていますが、コンテンツとの関係をより密接にしていくためには、やはりディスクメディアに保存できなくてはいけないのです。素晴らしい映像は、自分の皮膚感覚で感じてエアチェックという能動的な行為で残すことでユーザーと緊密な関係になるのです。手で持てる、触れるパッケージにすることで存在感が生まれ、パッケージそのものが“生き物”になる。コンテンツはハードディスクに入ったままでは、仮のものでしかありません。コレクションというものは、存在感を再確認したいという欲求であり、自分の人生にとって非常に重要なものなのです。

――エアチェックにおけるディスクメディアの存在意義は大きそうですね。

麻倉氏: ディスクの時代になったことで、エアチェックの趣味性がより高度化しました。DVDレコーダーが登場して、ハイビジョン放送がスタートして、最近ようやくこの2つが融合し始めています。エアチェックマニアにとっては、究極の夢が実現できる時代になったといえるでしょう。そういった意味で、次世代のBlu-ray DiscやHD DVDは、最終アーカイブメディアとしてエアチェックにふさわしい媒体です。次世代ディスクフォーマットはエアチェックということを十分に考えてもらいたいですね。

――そこで問題となるのが“コピーワンス”ですよね。

麻倉氏: コピーワンスに関する私の意見は、ITmediaでも数多く取り上げてもらい、読者からの反響も大きかったようですね。コンテンツが素晴らしいものになればなるほど、バックアップをとりたい、コンピレーションディスクを作りたいというニーズは高まるものです。ですがその欲求を「1回録ってしまったら、それでおしまい」というコピーワンスが阻んでいるのです。

 素晴らしいコンテンツがあるのだからこそ、コピーワンスで縛るのではなく、コピーのニーズを課金などで対応したり、チェックアウトなどコンテンツを持ち出せる仕組みを作るなどして活用できる方法を作り出して欲しいのです。コピーワンスの問題は、これからもっと声高に叫ばなければならない。新しい時代の新しいエアチェックを提案しなければならないのです。

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