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「ネットはTVと共存」 BIGLOBE、動画配信に本腰

» 2005年03月25日 16時42分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 NECのISP「BIGLOBE」が動画配信事業を加速している。ブロードバンドユーザー向け映像ポータルサイト「BIGLOBEストリーム」を核に、TV局などと連携して独自コンテンツを次々に配信。動画広告も積極展開し、1000万ユーザーを集める動画ポータルに育て上げる。動画事業の売り上げを2007年度には200億円に伸ばし、収益の柱に育てる。

「ネットとTVは共存できる」

 「ネットと既存メディアはいいシナジーが見込める」──同社BIGLOBE事業本部長の谷岸一善執行役員は、TVと相互補完しながら共存共栄を目指す姿勢だ。

 ブロードバンドによる映像配信が普及するにつれ、通信と放送の融合が進み、ネットがTVを飲み込んでしまうとの見方もあるが、谷岸執行役員は「動画配信とTVは共存共栄する」と話す。「TVは数千万人の視聴者に同時・一斉にリーチでき、公共性が高いなどネットにはないメリットがある。ネットはTVにはない双方向性を備えており、ユーザーの声を吸い上げやすい」。

 実際、ユーザーもネットとTVを同時に楽しんでいるという。「BIGLOBEストリーミングのユーザーの多くが、ネットを使いながらTVを見たり、携帯電話でメールをしている。日本人は、生活空間の中で複数メディアを同時に利用する“メディアコングロマリット”を実現していくだろう」(同社BIGLOBEビジネス事業部の佐久間洋事業部長)。

 現在、動画事業はBIGLOBEストリーミング上で展開している。有料コンテンツやECといったコンシューマー向け事業で収益の4割を、動画広告など企業向けマーケティングサービスで残り6割を稼ぐ算段だ。携帯電話向け動画配信も近く始める。

 事業の成否の鍵を握るのがコンテンツ。映画の先行公開映像やTV番組と連動した映像など、既存メディアと連携して優良コンテンツの囲い込みを進める。

 現在も、TV番組制作会社と連携してBS朝日のドラマ「19borders」を放送と連動して配信しているほか、出版社などと提携し、「朗読劇 電車男」を独占配信中。映画「四日間の奇蹟」の制作委員会にも参加し、メイキングフィルムを配信するなど、魅力あるコンテンツ確保に向け、制作段階からの投資も行う。

 コンテンツの更新頻度も高め、ユーザーが毎日訪問するサイトにする。ユニークユーザー数を現在の180万人(月間)から、2007年には1000万人(週間)に伸ばしたいとしている。

 企業向けマーケティングサービスでは、動画広告やショートフィルムの配信、インフォマーシャルの展開などを支援する。4月1日から提供する広告メニューでは、BIGLOBEストリーミングの動画広告や、テキスト広告、バナー広告、BIGLOBE会員向けメールマガジンなどを組み合わせて利用できる。

 NTTコミュニケーションズのISP「OCN」の動画サイト「OCN BroadbandMedia」と共同で動画広告を配信する体制も整えた(関連記事参照)。企業が自社のサイト内で動画配信したい場合には、BIGLOBEの配信プラットフォームも提供する。

ショートフィルムをプロモーションに利用する企業が増えている

 ADSLに続いてFTTHの接続料金も低下し、国内ネットユーザー数の伸びが鈍化する中、ISP各社にとって接続料に頼らない収益体制の確立は最優先課題だ。BIGLOBEも、Blogなど付加サービスやコンテンツ販売などを拡大してきており、接続料金以外からの売り上げは、2004年度で全体の48%にまで伸びた。来年度には5割を超える見込みで、動画事業でこの割合をさらに高める。

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