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エアコンがパネルを着替えたら?――三洋の“デザイン家電”戦略(2/2 ページ)

» 2005年04月06日 06時11分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
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 形状がシンプルになったら、次はカラーリングだ。「これまで、エアコンの色が白だったのは、白い壁に合わせるためだ。しかし、インテリアがさまざまなのだから、部屋が持つ“空気”に合わせて色も選ぶべきだ」。

 関氏によると、インテリアの種類は「シンプルモダン」と「ヴィンテージ」の2つに大別できるという。そこで、インテリア雑誌などから2つのグループで頻繁に使われる色を徹底的に調べ、シンプルモダンからブラックとシルバー、ヴィンテージからブラウンとゴールドをチョイスした。また、部屋のアクセントとなるインテリアの色から“定番の赤”と“流行のオレンジ”を選択し、どちらの部屋にも合うホワイトをくわえた。

 さらに、微妙な色合いを決定する際には、“朱”や“紅”といった日本の伝統色をモチーフにしたという。「日本古来の色は、すべて自然由来の色だ。和室など、自然の色で構成されたインテリアにも合う」(同氏)。

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 デザインに対するコダワリは、製造元を示す企業ロゴの位置にも及んだ。通常は前面パネルなどの目立つ部分に企業ロゴや製品ブランドのマークを入れるものだが、「四季彩館」の場合は「SANYO」マークが見えない。カッティングエッジラインのカットされた部分――つまり本体下部の黒い部分にひっそりと付けられている。

 隅に追いやった理由は、「デザインのバランスが崩れるから」だ。もちろんマーケティング担当者は、「店頭に商品を並べたとき、企業ロゴが見えないのはまずい」と反対したが、「最後は話し合って納得してもらった。四季彩館は、店頭でもすぐにわかる。存在そのものが三洋電機を示すと考えている」(関氏)。

デザインネットワーク構想

 こうして開発された「四季彩館」は、2-3月期に同社のエアコン販売台数の2割を占めるなど好調なスタートを切った。昨年までのハイエンドシリーズは1割程度というから、異例のヒットといえる。

 ちなみに、最も人気のある色は「ホワイト」で、全体の27.2%を占めている。少し保守的にも思えるが、2番目の「シルバー」が24.8%、3番目のゴールドも22%と光モノの健闘も目立つようだ。

カラー 構成比
ホワイト 27.2%
シルバー 24.8%
ゴールド 22%
オレンジ 9.4%
ブラック 6.7%
ブラウン 5.5%
レッド 4.3%

 「ある販売店では、1人で5色を買っていったお客さんもいた。安くても15-16万円はする商品を、一度に5台も買うというのは、あまり聞かない。価格が高くても、アピール度は高いことがわかった」(井植氏)。

 井植氏は、新たなデザイン商品の計画については語らなかったものの、「常にキーワードとして持っている」という表現でデザイン家電を拡充していく方針を明確にした。さらに、「デザイン プロジェクト」の新しい展開として、IDEE(イデー)会長の黒崎輝男氏がプロデュースした「世田谷ものづくり学校ーIKEJIRI INSTITUTE OF DESIGN」に拠点を設けることを発表。社外施設にデザインに特化したオフィスを設けるのは、同社初の試みだという。

 世田谷ものづくり学校は、廃校となった区立中学校を利用した“クリエイティブ拠点”だ。多くのクリエイターやベンチャー企業が集まる交流の場であると同時に、コラボレーションや新しいビジネスを模索するための企業支援施設になると期待されている。

 「ものづくり学校には、3人のデザイナーが常駐し、今月からデザインとマーケティングの活動を本格化する。入居しているクリエイターとのネットワーク(人脈)作りや情報収集を通じて、新たなコラボレーションが生まれることを期待している」(井植氏)。

photo 戦略説明会には、IDEE会長の黒崎氏をはじめ、IMA代表の水野誠一氏、インテリア・アーキテクトのアシハラヒロコ氏、インテリアデザイナーの牛建務氏、坂井直樹氏らが同席した。後ろは、アーティストの日比野克彦氏が手がけた“エアコン・アート”。タイトルは「EXCHANGE」
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