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「2005年は“改善”の年」――Moraプロデューサーが語る音楽配信への期待(後編)インタビュー(2/2 ページ)

» 2005年04月14日 22時32分 公開
[渡邊宏,ITmedia]
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 「“1週間だけ試聴できる”というような、無料体験楽曲の提供は、MoraでもMusicDropでもすでに行っています。先に述べた定額制サービスなどは、Windows DRMのバージョン10を使用することで可能になりますが、Windows DRMを採用したMusic Dropの売り上げが小さいために追加投資が難しく、DRMの柔軟性を全面的に高めるのも困難なのが現状ですね」

 同社は2004年11月に音楽管理ソフト「SonicStage 2.3 for Mora」の無償配布を開始している。SonicStageはそれまでソニー製品に添付されるソフトという位置づけで、Mora推奨プレーヤーとしては「MAGIQLIP 2」が配布されていたが、MAGIQLIP 2はあくまでも再生ソフト。多くの楽曲を管理するには向かず、ポータブルプレーヤーへの転送機能も搭載していなかった。

photo 現在配布されているSonicStage 3.1。再生と楽曲ダウンロードに機能を限定したMAGIQLIP 2も引き続き配布されている

 「それこそ拝み倒して(笑)SonicStageを無償配布させていただいたのは、多くの人にMoraを試してもらいたかったからです。SonicStageも3.1になってMP3でのリッピングができるようになったりと改良が加えられていますが、これからもどんどん変わっていくと思います。変わっていくといえば、レーベルゲートとしても“Mora”のブランドをスタートさせた2004年4月から、楽曲の転送回数の変更やCD作成機能の搭載、ヤフーやAnyMusicへのサービス提供など、かなりさまざまな事に対応してきたという実感があります。それが今年ジワジワと効いてくるのではないでしょうか」

 単なるプレーヤーソフトではなく、統合音楽管理ソフトであるSonicStageを無償配布した背景には、「まずは体験して欲しいと」いう意向が込められている。それは決済手段にも反映されており、Moraは会員登録をしなくとも購入ができる珍しい音楽配信サービスとなっている。

 「会員登録不要で購入できるのは大きな武器だと理解しています。SonicStageの配布も含めて、いかに手軽に買ってもらえるかを常に考えていますし、個人的には“まず登録しろ”というのがイヤなんです(笑)。気軽に買える仕組みがMoraの一番のアドバンテージだと思っています」

CDパッケージと並ぶ流通を目指して――2005年のキーワードは“改善”

 2004年12月、浜崎あゆみのニューアルバム「MY STORY」の全曲がCDパッケージ発売前に、PC(音楽配信)と携帯(着うたフル)の2つを利用した配信が行われた。このように、音楽配信ならではという提供が行われつつある一方、いまだに「聞きたい曲が配信されていない」というケースも少なくない。Moraでは15万曲、Music Dropでは10万曲を配信しているが、それでも市場に流通している楽曲をすべてカバーしきれてはいない。

 「音楽配信はやると決めることよりも、決めた後の処理が煩雑だという側面があります。レーベルゲートに出資している企業でも、発売しているすべての曲を音楽配信向けに提供しているわけではないのですが、それはある意味仕方のないことだと理解しています。音楽配信にまつわる権利処理は、実際、それほど簡単に解決できる問題ではないという印象があります」

 しかし、浜崎あゆみの先行配信を行ったエイベックスは鈴木亜美の先行配信なども行っており、赤坂氏は「今後はこうしたCDというパッケージだけではない流通方法も増加するのではないか。そうした動きは歓迎」と言う。また、エイベックスのみならず、その他のレコード会社も音楽配信について積極的な姿勢を見せ始めているという。

 「レコード会社が提供してくれる曲数が増えたおかげで配信できる曲数もだいぶ増えてきましたし、ラインナップも充実してきたので、面白くなってきたと感じます。特に外資系レコード会社がたくさんの楽曲を提供してくれたことで非常に助かっています」

 「わたしたちのサービスMoraも2000年のスタートからすればかなり進歩してきましたが、まだまだです。iTMSぐらいの域に達しなければいけません。iTMSのサービスは素晴らしいし、iPodというハードも素晴らしい。だから、私たちはハードウェアメーカーへ“誰もが欲しがるものを作ってください。私たちも品揃えを含め努力しますから”とお願いするわけです」


 楽曲数の増加、新譜のいち早い提供など、音楽配信サービスとしての基本的な努力は継続していくという同社だが、携帯電話のミュージックプレーヤー化、ネットワーク対応家電の普及などが見られる中、次のアクションとしてはどのようなものを考えているのだろうか。

 「Music Dropは現在、Windows Media Player10のウィンドウからしかアクセス・購入できませんが、Webブラウザからもアクセスできるようにしたいですね」

 赤坂氏が今一番改善したいポイントとして挙げたのはMusic Dropの強化。一見地味なアクションに見えるが、実はこうした“改善”こそが、今年の大きな課題だという。

 「わたし自身、昔からのiPodユーザーですが、持っているiPodは古くなってきたせいもあってバッテリーがずいぶんヘタってしまいました。そうした要望を言い続けてきたら、ソニーの新型プレーヤー(NW-HD5)はバッテリーが交換式になっていました。ハードウェアもソフトウェアも進化していくものだと思っています。iPodの良いところと悪いところ、iTunesの良いところと悪いところ、便利なところは見習えばいいし、良くないところは反面教師にすればいいのです」

 「配信サービスについても、アメリカの配信サービスはある意味日本の後発だと私は理解しています。後発だからゆえに、iTMSのような良いサービスを提供できています。今度は日本のハードウェアとソフトウェアが改善を進めていく番です。その“改善”こそが2005年のキーワードになるのではないでしょうか」

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