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機能も質感もピカイチな“大人のデジカメ”――IXY DIGITAL 600レビュー(3/5 ページ)

» 2005年04月19日 15時20分 公開
[荻窪圭,ITmedia]

IXYならではの安定感のある画質と新しいマイカラーモード

 IXY DIGITAL系のすごさは基本的にはオートでのヒット率が高いことだ。画質はさすがキヤノンという安定感で、へんなハズし方をすることはほとんどない。肌色も結構いい感じに健康的。かなり記憶色重視・見映え重視の鮮やかさ・艶やかさを持っており、青空はより青く肌色はやや赤みを帯びた健康色にという傾向があるので(それを嫌うときは「すっきりカラー」というモードがある)、気軽にフルオートで撮るデジカメとしては絶品だ。

 AFも9点測距のAiAFは9点からAFのターゲットとした枠を表示してくれるのでどこにピントを合わせたかが分かりやすいし、AWBもなかなか正確で色温度が低いところではそれなりに照明の雰囲気を残しつつ補正してくれる。

 ISO感度は50〜400の範囲でセット可能だが、これはやや注意が必要だ。オートでは画質重視のセッティングのため、かなり暗いところでもできるだけ最低感度のISO50で撮ろうとする。このため平気で1/10秒などというスローシャッターになり、手ブレ警告アイコンを表示するのだ。しかもディスプレイにシャッタースピードが表示されないため、ISO感度を手動で上げるべきかどうかの判断をつけづらい。ある程度写真を知っている人なら、ISO感度を手動でセットするのが賢明だ。目安になるシャッタースピードを表示するか、逆に、IXY DIGITALがフルオート中心の初心者を狙うなら、早めにISO感度を上げるプログラムにした方が親切であろう。

 ISO200やISO400に増感したときの画質は、なかなかがんばっている。1/2.5インチCCDを採用したIXY DIGITAL 55よりノイズは気にならないし、同等クラスのCCDを採用した他機種に比べても(「FinePix F10」は別として)、高感度時のノイズは抑えられており、増感時独特の不自然さはあまりない。

 もともと発色は鮮やかではあるが、さらに色効果モードの「くっきりカラー」を使うと原色系が誇張され、ややコントラストが高くなって鮮やかな「濃い」画質を楽しめる。晴天下の屋外で使うとウソのような色で撮れるので、派手目の絵が好きな人、あとから見返す写真はきれいな方がいいという人は積極的に使うべし。

IXYならではの色効果モードではくっきりカラーやすっきりカラーなどを選ぶことができる。効果は一目で分かるほど強めにかかるのでうまく活用したい

 そしてさらにユニークな機能が搭載された。マイカラー機能である。

 M撮影モードにしてFUNC.メニューから「マイカラー」を選ぶと使える。基本的には「いったん撮影した画像に対してカメラ内部でデジタル処理をかけてより凝った色彩の写真を作っちゃおう」というデジタルならではの機能だ。

 マイカラーモードでは、色をポジフィルム風に派手にする「ポジカラー」、ポートレート用の「色白肌」、「褐色肌」、特定色を誇張する「あざやかブルー/グリーン/レッド」、指定した色だけを残してあとはモノクロにする「ワンポイントカラー」、指定した色を他の色にチェンジする「スイッチカラー」、そしてレッド・ブルー・グリーン・肌色の彩度をコントロールできる「カスタムカラー」を選べる。

マイカラーモードではポジフィルムなど9個のカラーモードを使うことができる。これはスイッチカラー。ここでMENUボタンを押すとカラーをセットするモードになる。

 ポジカラーはもう空の青や木々の緑をめいっぱい誇張する。色効果モードの「くっきりカラー」との違いが気になるが、色効果モードは「画像を生成する時点で色効果を施す」もので、マイカラーモードは「いったん画像を生成してからデジタル処理で色を変更する」もの。だから、例えばポジフィルムカラーとくっきりカラーを比べると、ポジフィルムカラーの方が不自然な発色になる傾向があり、常用するなら色効果モードを薦める。

 マイカラーモードはあとから処理をかける関係上、MENUから「元画像を記録する」オプションを選べる。コレを使うと元画像と加工した画像の両方が記録されるのだ。もちろんその分記録メディアを圧迫するが、元画像が残るのは安心できる。

 色白肌や褐色肌は確かにそれっぽい加工をしてくれるが、さすがに不自然さは残るし(褐色肌の方がまだ楽しめるかも)、背景の色にも影響するのでちょっと遊びの機能と考えた方がいいかもしれない。ワンポイントカラーやスイッチカラーは写真で遊ぶ機能。

スイッチカラーの場合、中央の枠に目的の色がはいるようにし、左キーで変更前の色を、右キーで変更後の色を、上下のキーで範囲をセットする。その場で好きな色をさっと指定できるのは面白い

 インタフェースも凝っていて、スイッチカラーの場合、変更したい色の部分と、それをどんな色にしたいかを液晶モニターを見ながら選ぶ。赤い花を青くしたいときは、青いところを探してそれにカメラを向けてセットするわけだ。さらに、色の変化する範囲を決める。そして撮影だ。どのくらい変化があるかは作例のページを参照のこと。

記録メディアがSDメモリーカードに変わったがバッテリーは変わらず

 IXY DIGITAL 600の機能・性能をざっと見てきたので、最後に残ったネタと総評で終えよう。

 CCDが大きくてハイエンドな分、IXY DIGITAL 50/55に比べるとボディも大きく重いが、1/1.8インチCCD搭載機としてはかなりコンパクト。前作のIXY DIGITAL 500に比べても、薄くなり、全体に丸みを帯びたことでさらにコンパクトに感じる。これは特筆しておきたい。

このシリーズでははじめてSDメモリーカードを採用。底面のカバーを外すとバッテリーとカードスロットが見える。バッテリーは前モデルと同じものだ

 また小型化と同時に何気なく記録メディアが変わった。SDメモリーカード隆盛の中で、キヤノンのPowershot系とIXY DIGITALの3桁モデルはCFカードを使い続けてきたが、IXY DIGITAL 600でとうとうSDメモリーカードに移行した。旧モデルから買い換えユーザーには不満かもしれないが、SDメモリーカードも大容量化・低価格化が進み、事実上のスタンダードなのでIXY DIGITALとしては悪くない方向だと思う。

 逆に変わらなかったところもある。バッテリーだ。バッテリーは旧モデルと同じで、容量も790mAh止まり。よって持ちもCIPA規格で約180枚とあまりよくはない。

 ともあれ、「フルオート系高級コンパクトデジカメ」というくくりではピカイチの完成度で、個々の性能よりデザインと総合力と画質で勝負というのがよく分かる。まさに飾っておいてもよさげな大人のデジカメだ。面白みはあまりないけれども安心して使える保守本流の牙城健在といえよう。

作例

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