ITmedia NEWS >

プラズマテレビは生き残れるか麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(2/4 ページ)

» 2005年04月29日 22時23分 公開
[西坂真人,ITmedia]

麻倉氏: 1970年代には家電各社がプラズマを開発していましたが、あまりに難しくて、結局は富士通1社になってしまった時期がありました。ですが、富士通が1992年に世界初の21型PDPカラーパネル開発に成功すると、またプラズマに対しての見方が変わったのです。「これならテレビとして使える。プラズマに投資しよう」と各社が再参入してきました。

 今は「プラズマ vs 液晶」の図式がいわれていますが、プラズマの歴史を調べてみると、開発当初からプラズマは液晶と戦ってきたのがわかります。あるときは液晶が勝ち、あるときはプラズマが勝ち、という波を繰り返してきました。言い方を変えると、いつも逆風なのです。たまたま今は、プラズマの波がボトムにきているのかもしれないですね。

――デジタル放送やDVDの普及などで、テレビに求めらる資質も変化していますよね。

麻倉氏: 20世紀までのテレビは情報の窓でした。世界で今何が起こっているかを知らしめてくれる遠眼鏡みたいなもので、情報を正確に伝える役割を担った“時代モニター”だったのです。しかし21世紀のテレビは、作品性の高いものを映すものになってくるでしょう。すでにデジタル放送ではハイビジョンがスタートし、コンテンツの中身も濃くなってきています。コンテンツが“感動型”に急速に変わっているのです。

 私は、ディスプレイには「表示」「再現」「表現」「創造」の4つの要素が必要であると考えています。20世紀型のディスプレイは「表示」が中心でした。しかし今後増えるであろうリッチコンテンツには「表現」の映像が非常に多くなるのです。

 例えば、ボケ具合が正確に出ないと遠近感が表現できません。ですが20世紀型のテレビ……つまりブラウン管は解像度の弱さを精鋭度を強めることで補っているため、ボケまで強まってハッキリしてしまい距離感が出なくなってしまうのです。

――今までと同じ明るい部屋で“感動型”コンテンツは楽しめるのでしょうか。

麻倉氏: これまでのテレビはリビングルームで明るい場所で見ていました。娯楽番組やニュースのような20世紀型コンテンツならそれでよかったでしょう。ですが、これからはコンテンツがシアター型になってきます。より大きな画面を、暗い環境で見ることで“没入感”“臨場感”を得られる。そして暗い階調の中にコンテンツの重要な内容があるのです。

 作品性の高いコンテンツを見るときには、ディスプレイ以外は全部ノイズ。明るさといった日常性がコンテンツの作品性を弱め、没入感を妨げるのです。作品というのは非日常性の文化なのに、それを日常性の中で見るのには矛盾があると思いませんか? 感動型コンテンツは、暗い環境で見ることが絶対条件なのです。映画館で映画を観る、コンサートホールで音楽を聴く……という状況のどこに、客席がこうこうと明るい環境があるでしょうか。

 この“暗さ”という条件が、プラズマにとって追い風になるのです。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.