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大画面で“プラズマより液晶”が選ばれている理由(2/3 ページ)

» 2005年05月10日 23時35分 公開
[本田雅一,ITmedia]

プラズマの復活はあるのか?

 こうした中で言われているのが、松下のプラズマへの過剰投資に対する懸念だ。ただし、松下へのこうした批判は、ややバイアスがかかっている面があるようにも思える。

 昨年、ソニーのプラズマテレビ撤退騒動以降、一部のマスコミで「プラズマはやっぱりダメじゃないのか? 」という認識のもと、液晶テレビに偏った報道がなされたケースが目立った。おそらく表示パネル事業で業績好調なシャープとの対比でストーリーを描きたい新聞や一般誌記者などの意志も入っていたのではないだろうか。

 確かに以前のプラズマテレビは、自発光デバイスの割には黒沈みも今ひとつで、暗部がノイジーな上に暗部階調も今ひとつでリニアリティに欠けるという印象だったが、松下がPX300シリーズで施した改良で、暗部に見られた欠点がかなり解消された。個人的にはこの時点で「画質的にはプラズマがかなり優位に立った」と感じていた。

 ところが、上記のような「画質」というポイントは、液晶かプラズマかを選択する決め手にはなっていない。おそらく理由の一つは、松下が主張しているように展示スペースの明るさにあるのだろう。

 我が家の場合、リビングルームは昼間の陽が差している時間帯でも500〜700ルクス程度。夜はせいぜい200〜300ルクス程度で、テレビが置かれている場所に至っては100ルクス程度しかない。一般的な販売店の店頭(1000〜1500ルクス)では、プラズマは見栄えがせず、説明を付加しなければ良さがわからない。一方、明るい場所でも元気よく見える液晶テレビの“強み”は、1000ルクス以上の明るい環境ではさらに際立つ。

 これに対して昨年末から、松下や日立はプラズマテレビの展示スペースを暗くするよう営業努力をしているが、暗い場所での展示が一般的な北米の販売店ほどには“暗めの店作り”には成功していない。

 もうひとつ。映像ソースや視聴環境による映像の見え方の違いを、一般顧客があまり意識していないこともプラズマテレビとっては不利な条件になっているように思える。

 バラエティ/ニュース/情報番組などの場合、輝度レンジの高いところを使った映像が多い。しかし作品性の高い映画/ドキュメンタリー/音楽ライブなどの場合、作品全体を通して輝度レンジをうまく使いながら、明るい場面と暗い場面の差を表現する。このため、輝くようにまぶしい場面以外では、比較的低い輝度レンジに収まっていることが多く、特に室内など暗い場面の描写では暗部の微妙な陰影でシーンを表現している場合が多い。この傾向は映画で顕著で、特にハリウッド系の映画はここ数年、基準となる登場人物の肌などの輝度が抑えめになっているように思う。

 大画面で何を楽しむかは人それぞれだが、せっかくの大画面だけに作品性の高い映像を高画質で楽しみたいというユーザーも多いだろう。ところが暗い場面の多い映画などは、明るい展示スペースでは見辛く、どうしても通常のテレビ番組中心のデモンストレーションとなりがちだ。

 ユーザーが「大画面やハイビジョンでこそ楽しめる映像は何か? 」をしっかりと認識し、 標準解像度の小さな画面で楽しんでいた頃とは映像ソースに対する見方や接し方が違ってきていることに気付けば、プラズマテレビに対する見方も変わってくるかもしれない。

 もっとも、そうした“画質”という切り口以外にも、液晶とプラズマが再び良きライバルとしてシェアが拮抗しそうな材料がある。

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