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マクロレンズを使いこなす――キヤノン「EF-S60mm F2.8 マクロ USM」レビュー:デジ一眼「2本目のレンズ」(5/6 ページ)

» 2005年05月20日 01時00分 公開
[永山昌克,ITmedia]

風景やポートレート撮影にも生かせる

 マクロレンズは、マクロに「強い」レンズであり、マクロ「専用」ではない。風景やスナップ、ポートレートなど通常の距離での撮影にも、もちろん対応する。この「EF-S60mm F2.8 マクロ USM」の場合は、35ミリに換算して96ミリ相当の画角であり、「中望遠レンズ」としても活躍するだろう。

 ただし、一般的な中望遠の単焦点レンズやズームレンズに比較すると、ピントリングの操作感はやや異なる。なぜなら、ピントリングの1メートル付近から無限遠までの間隔が比較的狭いので、リングを少しずらすだけで、ピントが大きく移動するからだ。中景や遠景の被写体を撮る場合、通常のレンズの感覚でマニュアルフォーカスを行うと、ピントがすぐにズレる点に注意したい。

 またAFで撮る場合は、AFがうまく合焦しない被写体では、ピントリングが最短撮影距離から無限遠までの間を行ったり来たりすることがある。マクロレンズ以外でも、ピントが合わないときには同じ現象は生じるが、マクロレンズのほうがピントの移動量が大きいぶん、その移動がうっとおしく感じる。「EF-S60mm F2.8 マクロ USM」には、ピントリングの回転を制限するフォーカスリミッター機構がないので、なおさらだ。

 どちらも慣れれば問題ないが、最初のうちは少し戸惑うかもしれない。この2点さえ気にならなければ、「EF-S60mm F2.8 マクロ USM」はマクロ域から無限遠までのシャープな描写力を堪能できる。マクロ専用レンズと考えるのは、もったいない。


「EF-S60mm F2.8 マクロ USM」の作例

photo 絞り羽根は7枚で、開放絞り以外では光のボケは7角形になる。このカットではF8まで絞り込んで、トンボの全身をシャープに描写した
photo こちらは、開放値から1/3段だけ絞ったF2.8で撮影。そのためトンボの体の後ろや羽はぼけ、ピントが合った顔の部分が引き立った
photo 画面全体に渡って、細かい部分まできっちりと解像している。安定感の悪い岩場に立って撮影したが、コンパクトなレンズなので手持ちでも扱いやすい
photo 画質を優先するには、絞り込んで撮影したいのが本音だったが、たまたま三脚がなかった。そこで、開放F値を選び、感度を高め、カメラを地面に置いて撮影した。開放F値でも、意外なほどシャープに写り、一安心
photo 窓ガラスごしの撮影ではあるが、画面の隅々までくっきりと描写できた。96ミリ相当の撮影画角は、風景の一部分を切り取ったような画面構成ができる

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