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今年の冬、“つながる家電”が市場を席巻する?(2/2 ページ)

» 2005年05月30日 17時00分 公開
[渡邊宏,ITmedia]
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 同社はDLNA準拠製品の開発キットとして「DiXiM HAK(Hardware Adaptation Kit)」を発表、6月から提供を開始する。メディアサーバー機器を開発できる「DiXiM DMS HAK」とプレーヤー(クライアント)機器を開発できる「DiXiM DMP HAK」が用意され、5月31日から台北で開始されるコンピュータ見本市「Computex Taipei」にも展示される。

photo DiXiM DMP HAK。Sigma designsのEM8620Lを搭載したリファレンスボードと各種アプリケーション/ドキュメントで構成されている

 これらの開発キットはDLNAガイドラインに対応しており、このキットで開発された機器は容易にDLNAで求められている相互接続性が確保できるほか、従来は半年〜1年以上の時間が必要だった開発期間を最短で3カ月程度に短縮することが可能になる。

 I/Oやインタフェースはメーカーが個別にカスタマイズ可能なほか、実際に製品化した場合にはその時点から別途ライセンス料が発生する仕組みになっており、DiXiM HAK自体の価格は安価に抑えられる予定だ。

 「DiXiM HAKを利用すれば、DLNAガイドラインに対応した製品がきわめて短時間に製造可能となりますので、より製品数が増え、ひいては市場の拡大が期待できると考えています。それに、ハードウェアとソフトウェアをセットで提供するので、“とりあえず作ってみよう”というメーカーの要望に答えることができます」

“つながる”は決してハイエンド製品向けの機能ではない

 「6月からDiXiM HAKの提供を開始しますので、早いメーカーならば3カ月後の9月には開発を完了し、今冬には“DLNAガイドラインに対応した製品”として市場に投入するのではないでしょうか。これを利用して開発された製品が、10機種や20機種、“ドドッ”と登場してくれればいいと思いますね」

 田浦氏はそう語り“つながる家電”の市場拡大を期待するが、問題がないわけではない。最も大きな問題は、現在の最新規格であるDLNAガイドラインv1.0がまだまだ基本的な機能しか規定していないことだ。

 先にも触れたが、v1.0は相互接続性の確保までがメインで、「どんなコンテンツを流し、どのように扱うか」については未確定の部分が多すぎる。「道路は作り始めていますけど、どんな車をどんなルールで走らせるかは決まっていませんよ」という状態だ。

 MP3やAAC、MPEG-4など既にAV家電でも多く使用されているフォーマットがオプション扱いとなっているほか、著作権管理機能も実装されていない。

 これらについてはガイドラインのバージョンアップを図ることで解決していくことが提示されているが、DiXiM HAKはv1.0準拠であり、これを利用してストレートに製品を作ると、これらに対応しない製品となる。DiXiM HAKをベースに開発を進め、独自に対応フォーマットの拡張を行うなどの改良も可能だが、そうすれば開発期間は長くなり、相互接続性は低下する可能性がある。

 デジオンもこうした状況は把握しており、DLNAガイドラインのバージョンアップにあわせて(場合によっては先取りしながら)DiXiM HAKの改良を進める。「DivX」「WMV 720p」「Windows Connect Now」「H.264」「DTCP-IP」など各種規格への対応を順次進めていく計画だ。

 DLNAガイドラインは今年中に著作権管理機能までも備えたv2.0がリリースされる予定であり、これを待ってから、高機能な製品が開発できる開発キットを提供するという判断もあったと思われる。しかし、このタイミングでだからこそ意味があると田浦氏は述べる。

 「AV家電にDLNA対応機能を実装しても、高速なCPUやネットワーク端子を搭載しているミドル〜ハイエンドの製品ならば、ほぼ大きなコストアップはないでしょう。これからはテレビもネットワークに対応した製品が増えてくると思いますが、例えばここで“プラス5000円で他社のレコーダーと連携できますよ”とできればいい差別化要因になると思いませんか?」

 ハイエンドのAV機器へDLNA対応機能を提供するならば、著作権管理やハイビジョン、5.1chオーディオなどへの対応は欠かせないが、それらを実現するガイドラインの策定はまだ先。それならば、まずは「コンテンツを相互利用できる環境」をミドルレンジ機器の付加価値として提供し、市場を作り出す――というのが田浦氏の考えだ。

 DLNAがネットワークを使ったコンテンツの相互利用を目的とする以上、対応機器が多くなければ、いくら優れた機能を持っていてもその規格は普及しない。DiXiM HAKはその対応機器の増加を加速することができるのか。その答えは半年後に出る。

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