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東芝・藤井氏に聞く――次世代DVD統一交渉“決裂”の背景(前編)インタビュー(2/3 ページ)

» 2005年06月06日 18時46分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 「最初のコンタクトは昨年の秋、ソニーから話がありました。そのときにもさまざまな検討をしましたが、コンセプト的に合いませんでした。その後も断続的に話をしていたことは確かです。久夛良木氏とは個人的にも親しく、様々な形で話をしており、その中で次世代光ディスク統一の話題もあった」

 「もともと、私は0.1ミリ、0.6ミリといった基本構造には拘っていません。正式ではないが、0.1ミリでも両社の技術を合わせて良いものにできるならば、統合する方がいいという話は雑談の中でしていました。これは正式なモノではなかったのですが、その後、2月にソニーから0.1ミリへの変更を許容する用意があるのならばと、正式に統一交渉の申し込みがありました。

 言い出したのは私と言われていますが、公式な申し入れとしてはソニー側からだったと認識しています。その後、統一するならば松下電器を外して交渉はできないとのことで、3社交渉に発展しました」

――東芝がHD DVDを推進している理由のほとんどは、0.6ミリという基本構造に由来しています。この部分を変更することは、従来の主張を覆すことにもなります。そこまでして統一を目指したのはなぜでしょう?

 「言葉のニュアンス、細かな部分での認識の違いでしょう。われわれは0.1ミリが良い選択であるなら、基本構造に拘らないと伝えました。また、3社で交渉における3つの基本原則も定めました」

 「ひとつは規格統一は行われるべきであり、細かな利権に左右されないようにすること。大手3社が交渉するのだから、互いに利益を確保するための談合であってはならない。このため消費者利益が最優先の結論を出さねばならないこと。統一において3社がともに痛みを分かち合って良い規格を作り出そう。この3つの原則が大前提にありました」

 「とはいえ、交渉で消費者にとってベストな規格を再検討しようと言っても、物理構造が違っていては、そもそも交渉にはならない。そこでまずは0.1ミリをベースに検討を開始しました」

――0.1ミリ構造で合意できなかったのだから、次は0.6ミリ構造でも話し合うべきとおっしゃっているようですが、そもそも0.1ミリが前提で始まった交渉ではなかったのですか?

 「0.1ミリ構造で交渉していたかといえばその通りですし、0.6ミリに拘らないと話したのも事実です。しかし“0.1ミリで合意した上で話し合っている”とは一度も言っていません」

 「大容量化ならば0.6ミリでの多層化といったアプローチもある。0.6ミリには0.6ミリの良い部分があるのに、0.1ミリで最初に合意した上で交渉となると、それは消費者利益優先とは言えません。確かに0.1ミリでの交渉を開始した時に、これでダメならば0.6ミリという約束はしていませんが、そもそも統一交渉における3つの原則を考えれば、次は0.6ミリでも検討するのが、対話の順序として当然ではないでしょうか」

――0.6ミリを諦めても構わないという意思表示をしたのは、技術論ではなく経営判断だったのでしょうか。つまり0.6ミリの優位性は現在でも動いていないと考えていますか?

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