操作性という点で1つだけ気になったのが、ビデオ入力3の扱いだ。リモコンやテレビ本体にある「入力切替」ボタンを押すと、「テレビ」―「ビデオ1」―「ビデオ2」という具合に切り替わるのだが、テレビ本体にある「ビデオ3」だけは別。ビデオ3にしたいときは、メインメニューから「ビデオ3設定」を呼び出し、「テレビモード」から「ビデオ3」へと切り換えなければならない。テレビ(とビデオ1/2)に戻すときも同様の作業が必要になる。
これは、送信機側で切り換える部分と、テレビ本体側で切り換える部分が区別されているためだが、利便性を考えればボタン1つでカバーしてほしかったところ。あるいは、もう1つボタンが付いてもいい。いちいちメニューの階層を掘り下げなければならないのは、ちょっと面倒だ。
液晶パネルは640×RGB×480ピクセルで、画素数では92万1600画素相当になる。なんといっても8インチだから、通常の液晶テレビに比べてピクセルサイズは格段に小さい。輝度は400カンデラ。最新の液晶テレビと比べれば小さい数字だが、実利用には必要十分だ。
ただし、実際にテレビ映像を見ると、“パッと見”はキレイに見えるものの、画面が単純になるとアラが出てくる。風景などの複雑な場面ではわからないが、よく見ると全体的にノイジー。あるいは画素が小さいため、細かいジャギーがノイズっぽく見えるのかもしれない。
中でも原色を使った絵が苦手のようで、たとえば専門チャンネルが常に表示するロゴマークなどは、細かい部分が崩れ気味になってしまう。またある程度の面積を同じ色が占めると、細かいグラデーションが生じる感じ。全体的に映像の情報量が不足している印象を受けるが、テレビ本体の外部入力(ビデオ3)でも同じ傾向が見られたため、符号化時の情報欠落が原因ではなさそうだ。パネルそのものか、テレビ側の回路に起因していると思われる。
もっとも、これは画質を評価するときのお話。このサイズのテレビを至近距離から見る人はいないだろうし、腰を据えて映画を鑑賞したいとか、ハイビジョン映像を見たいとかいう無茶な人はまずいないだろう。たとえば寝室において寝る前にちょっとテレビを見たいときなどには十分な画質だ。一方、応答速度が30ミリ秒ということで少し心配していた追従性は、画面が小さいこともあってか、あまり気にならなかった。
むしろ、昔のテレビ番組などを見るとき、小さい画面と少しノイジーな映像が、なにやらいい感じの雰囲気を醸し出すから不思議だ。CSの専門チャンネルで放送している70年代のドラマなどを見ていたら、内蔵スピーカーのこもり気味の音も手伝って、なんだか昭和に戻ったような気分になる。これがもし、レトロな外観に合わせて画質やスピーカーの音をわざと調整しているのだとしたらスゴイ演出なのだが……たぶん偶然だろう。
デザイナーの深澤氏といえば、携帯電話の「INFOBAR」や無印良品などのデザインを担当したことでも知られている。その評価には「シンプル」や「大胆」といった表現がよく使われるが、こうした評価はこの製品にもぴったりとハマる。ただ、シンプルな中にも実用的な機能美という要素が見え隠れしていたINFOBARなどに対し、こちらは“遊び心”と“洒落っけ”がたっぷりだ。しかもワイヤレス。レトロに見えて最先端なところがまたいい。
気になるお値段は、直販価格で15万7500円。ワイヤレス液晶テレビという括りで比較すると、ソニー「Airboard LF-X5」(7型)やカシオのお風呂テレビ「XFER XF-810」(8型)の店頭平均の1.5倍ほどになってしまうが、全く趣の異なる製品だから比較するのも野暮というもの。少なくとも機能的に不足することはないとは分かったから、気になっている人はお財布と相談してみてはいかがだろう。
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