本体が小型軽量のため、それが逆に災いし、手持ちでは安定が保ちにくい。手ブレ補正も当然ながら大きな動きには有効ではないので、勢いグラグラとした映像になりがちだ。通常のDVカメラでの撮影であれば、「まあ、しょせん素人だし」と自己弁護してすませるところだが、ハイビジョン映像では実にそぐわない。
また、映像が高精細なだけに、大画面テレビやフロントプロジェクターで観る機会も多いかもしれないが、そんな手ブレ映像が映し出されては、吐き気をもよおす人が続出するだろう。常套手段ではあるが、三脚を常用するか、なるべくワイドで撮るというスタイルを、通常の撮影時にもまして、強く心得ておくことが必要だろう。
全体に見て、本体機能は一般的な家庭用ビデオカメラと大差ないともいえるが、HDV1080iという撮影フォーマットのおかげで、描写性能は非常に高いといえる。このような製品が15万円程度の価格で手に入るのは、正直いって驚きだ。
マニュアル撮影に関しては、やや頼りない部分もあるかもしれないが、それなら「HVR-A1J」を選ぶ手もある。こちらも定価で27万8250円と、コストパフォーマンスは高い。もちろん「HDR-HC1」でも、タッチパネルを活用したスポット設定や、フォーカスリングでのマニュアル操作時をより容易にする「拡大フォーカス」など、われわれ一般ユーザーにとって十分といえる機能を有している。
ソニーのビデオカメラは伝統的に素直な絵づくりで、派手な映像調整をしないのが特徴だが、Hi8の時代などは逆にそれが災いし、ともすれば平板な映像になりがちだった。DVでもそれなりに豊かな表現には達していたが、HDV1080iという解像度と情報量に優れた記録方式を得て、その特徴がようやく最大限に生かされた気がしてならない。
より小型軽量な製品、あるいは、なるべく低価格な製品を望むというなら別だが、そうでなければ、現在、家庭用ビデオカメラの選択肢は「HDR-HC1」だけに絞られてしまったといっても過言ではないだろう。それほど、性能、そして、コストパフォーマンスに優れた製品である。
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