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この夏“買い”の大画面テレビ麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」――バイヤーズガイド編(2/4 ページ)

» 2005年06月30日 22時20分 公開
[西坂真人,ITmedia]

――そのほかのトレンドは?

麻倉氏: トレンドとして注目したいのはプラズマテレビです。プラズマに関しては4月のデジタル閻魔帳「プラズマテレビは生き残れるか?」で詳しく述べましたが、ここにきてプラズマならではという得意分野がはっきりしてきました。実際の販売では液晶が優勢ですが、液晶はユニバーサルディスプレイという役割からテレビ放送など情報伝達を中心としたコンテンツ向き。一方、プラズマは自己発光デバイスである利点を生かしたコンテンツ――つまり映画がポイントになっていくでしょう。明るいところで見るディスプレイが必ずしもいいものではなくて、家庭内での比較的暗い環境下で映画の“しっとり・艶っぽい・感動的な映像”が観られるというのが、プラズマの魅力なのです。松下が現在行っている映画の表現力をアピールするプラズマキャンペーンはまさにそれですね。

――“第3の大画面”として注目されているリアプロTVはどうでしょうか?

麻倉氏: 米国でブレイクしたリアプロTVですが、いよいよ日本にもその波が訪れてきました。今年前半までは“リアプロTVのトレンドを作っていこう”といういわば前奏曲の段階で、米国モデルを日本仕様にリファインしただけものが目立ちました。ですが今年の秋からは、日本市場を考えた製品が出てくるでしょう。米国でリアプロTVが流行った理由は、大画面で“比較的”画質もいいというところ。つまり松竹梅の竹レベルでよかったのです。しかし日本では、画質が“松レベル”じゃないといけない。液晶やプラズマとは違うテイストやクオリティが出るところをアピールすることがリアプロTVの今後の方向性でしょう。

この夏お薦めの大画面テレビは?

――以上のトレンドを踏まえて、この夏、お薦めの大画面テレビを挙げてください。

麻倉氏: それでは、私が今年の夏お薦めしたい大画面テレビを5機種紹介します。液晶3機種、プラズマ1機種、リアプロTV 1機種です。

 まずは松下のハイビジョン液晶テレビ“VIERA”「TH-32LX500」(最新価格はこちらをクリック)ですね。この製品は、「液晶テレビだからしょうがないね」と妥協している部分が非常に少ない。これまで液晶は視野角・応答性・ボケ・コントラストなどデバイスとしての根本的な問題があり、画作りという以前にまず欠点を隠すという歴史がありました。

photo 松下のハイビジョン液晶テレビ“VIERA”「TH-32LX500」(撮影協力:ビックカメラ有楽町店)

 ですがTH-32LX500には「液晶はこうあるべし」という主張があるのです。キャラクターをしっかりつけた画作りをしているのが勝因ですね。液晶らしくない品位がある映像に仕上がっており、ブラウン管的なテイストも感じられる。実は松下は早くから液晶テレビに取り組んでおり、もともと液晶での画作りのノウハウも豊富だったのですが、プラズマカンパニーなので液晶技術が埋もれていたのです。それが「32V型以下は液晶」という方針から、会社からも太鼓判を押されたカタチで高性能な液晶テレビが出てきたのです。

――液晶テレビではソニーの液晶ベガシリーズも評判がいいですよね。

麻倉氏: そう、液晶テレビでもう1機種お薦めしたいのがソニーのハイビジョン液晶ベガ「KDL-L32HVX」(最新価格はこちらをクリック)です。昨年のモデルなのですが、この製品の映像は、定評あるソニーのブラウン管テレビと画作りがまったく一緒。先日、あるメーカーの画作り講習会でハイエンドCRTモニターとして広く普及しているBVMシリーズとKDL-L32HVXとをリファレンスモニターとして並べてみたのですが、この2台の画作りがまさしく同じだったということを痛感しました。

photo ソニーのハイビジョン液晶ベガ「KDL-L32HVX」(撮影協力:ビックカメラ有楽町店)

 液晶パネルには松下と同様に日立のIPSを使っているのですが、ハイビジョン高画質化技術「DRC-MFv2」などを含むベガエンジンによって“ソニーピクチャー”をしっかりと作り出しています。松下のTH-32LX500は今年の新製品なので、最近のトレンドを受けて精細感が目立つ画作りになっています。一方のソニーKDL-L32HVXは、昨年の製品なのでやや精細感には欠けるのですが、その分、自然さが際立っている印象ですね。“液晶テレビばなれしたブラウン管画質”といえるでしょう。

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