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圧縮音源とポータブルプレーヤーの関係特集:初めてのポータブルプレーヤー(2/2 ページ)

» 2005年07月28日 12時23分 公開
[渡邊宏,ITmedia]
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圧縮音源フォーマットとビットレートの関係

 次に考えなくてはならないのが、圧縮音源フォーマットとビットレートの関係だ。ビットレートとは、単位時間あたりに何ビットのデータが処理あるいは送受信されるかを表す言葉で、圧縮音源についていえば、その数値が高い方が情報量が多い(原音に近い)ことを意味する。

 どの圧縮音源フォーマットを使用するにしても、ビットレートを高く設定した方が高音質(原音に近い)といえるが、データの圧縮率は低いので、当然ファイルサイズは大きくなる。一方、ビットレートを低く設定した場合には、圧縮率も高まってファイルサイズは小さくなるが、データの損失量も増えるため音質は低下してしまう。

 一例として、4分15秒の曲をSonic Stage Ver.3.1を利用して、ATRAC3の132kbpsと66kbpsという2つでビットレートで変換してみたところ、前者のファイルサイズは4136Kバイト、後者のファイルサイズは2070Kバイトと2倍以上の差となった。

photo 同じ曲・同じ圧縮音源フォーマットでも、ビットレートが異なればここまでファイルサイズは異なる

 ファイルサイズの小さい後者の方が、容量の限られているポータブルプレーヤーで使用するには適しているように思えるが、2つを聞き比べてみると明らかな音質の差があることが分かる。132kbpsでエンコードしたファイルはCDを聞くのとほぼ変わらないように感じるが、66kbpsでエンコードしたファイルはどうしても“スカスカ”した印象を受ける。

 これはATRAC3に限った話ではなく、どのような圧縮音源フォーマットでも、あまりに低いビットレートを選択して圧縮効率を高く設定すると、明らかに音質の劣化が感じられる。しかし、圧縮しなければポータブルプレーヤーに数多く収納できないのも事実なので、どの程度圧縮するか(どのビットレートを選択するか)については、容量と音質のバランスを考えた上で決定する必要がある。

 少ない容量しか持たないフラッシュメモリプレーヤーを使用しているならば、許容できる音質ギリギリまでビットレートを下げて多くの曲を収録するという工夫が必要だし、逆に大容量のHDDを搭載したポータブルプレーヤーを使用するならばビットレートを高く設定してもかまわないだろう。

 iTunesやSonic Stageなどがデフォルトで設定しているフォーマットとビットレートは、各メーカーが考えている「ちょうど良いと考えているバランス」から導き出されているといえる。iTunesのデフォルトはAAC/128kbps、Sonic StageのデフォルトはATRAC3plus/64kbps、WMPのデフォルトはWMA/128kbpsに設定されており、46分43秒(トラック数10)の音楽CDをそれぞれの形式で取り込んだところ、それぞれの総ファイルサイズは43.1Mバイト/21.6Mバイト/43Mバイトとなった。

photo iTunes/Sonic Stage/WMPの各標準フォーマット/ビットレートで46分43秒(トラック数10)の音楽CDを取り込んでみた結果

 MP3の開発元である独Fraunhofer IISによれば、MP3/128kpbsがCD-DAと同等のクオリティを持っているのとのことで、「CD○枚分の音楽がポケットに!」のようなキャッチフレーズはこの数値を基準としている事が多い。しかし、あくまでもこれはひとつの目安にすぎない。

 どの圧縮音源フォーマットを使用し、どのようなビットレート設定にするべきかは、自分の利用スタイルにあわせて設定するべきだろう。

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