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「iPod課金」への一家言コラム(2/2 ページ)

» 2005年08月02日 08時52分 公開
[渡邊宏,ITmedia]
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 しかしCDからではなく、音楽配信から曲を入手した場合にも、果たして同じ妥当性が存在するのだろうか。

 音楽配信で配信される音楽には無差別なコピーが行えないようにDRMがかけられており、ユーザーへある種の不便を強いることで、「権利者の利益保護とユーザー利益」のバランスを取っていると考えることができるからだ。

 これはユーザー利益をマイナスにすることで相対的に権利者の利益を確保するという考え方だが、音楽配信そのものがまだCDに比べればメジャーな存在ではないため、音楽業界全体のコンセンサスを得ているものではない。

 その証拠に、会見を行った団体の関係者は「利用者にある種の不便を強いることになっても、補償金制度のような権利者への権利保障は必要」とあくまでも権利者へプラスの利益をもたらすことが必要だと述べている。しかし、あるレーベル関係者は「(利用者にとってマイナスの利益になりかねない)DRM処理を前提に音楽配信サービスへ曲を提供している」と、現在の販売形態でもある程度は“権利者の利益保護とユーザー利益”のバランスが保たれているという考えを示している。

 権利者の利益とユーザーの利益、この2つのバランスを取ることが最終的な目的ならば、権利者が補償金を受け取る(そのかわりユーザーは複製を行う)ことと、ユーザーがこれまで可能であった私的複製へ制限が加えられる(そのかわり権利者は金銭的な保証は受け取れない)ということは等価といえないだろうか?

 「これまで可能であった私的複製」がどのような範囲までを指すかという問題もあるし、どこまで制限すれば対価として適当なのかという議論も起こるだろう。実際、音楽配信で販売されている音楽ファイルの複製制限については、いまだスタンダードといえる範囲が定まっていない。また、この考えはあくまでも筆者の考えであり、「権利者にとってプラスとならなければ、バランスを取るとはいえない」と考えることも可能である。

一度「制度」になると見直しには時間がかかる

 権利者利益とユーザー利益のバランスという話では、7月29日にデジタル放送のコピーワンスが見直されることが決定された(デジタル放送のコピワン番組、運用見直しへ)。2004年4月のコピーワンス運用開始から1年4カ月目の話であり、結論は年内に得るのが目標とされている。

 このように、一度制度として指定されてしまうと、見直しにはかくも時間がかかるものだ。iTunes Music Storeの開始も間近といわれ、音楽の流通手段そのものにも大きな変化が起ころうとしているなか、「iPodなどを速やかに補償金の対象へ」という主張はいささか性急であるように感じる。ユーザーと実際の権利者も含めて、どのようなバランスが適正であるか、広範な議論が行われるべきだろう。

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