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ロボットの“グッドデザイン”とは?(2/2 ページ)

» 2005年08月30日 04時19分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
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 多摩美術大学ブースでは、同大学生産デザイン学科と東芝研究開発センターヒューマンセントリックラボラトリーの一年間に渡る共同研究の成果を展示している。テーマは「UNIVERSAL DESIGN with ROBOTS」だ。

 ユニバーサルデザインといえば、“できるだけ多くの人が利用できるように製品や建物を設計する”ものだが、こちらは同じ場所で行動するロボットもユーザーの1人として位置づけ、人とロボットがうまく共用できる什器や住宅設計を提案している。展示されていたのは、荷物の運搬やスケジュール管理が行える家庭用ロボット、ロボットと人が共用するための棚、そしてロボットと人が住むための住宅デザインだ(模型)。

photo 東芝と多摩美術大学の産学協同プロジェクトによる「物の移動をサポートするロボット」。4つのタイヤで家の中を動き回り、目的の物を見つけると側面からアームを伸ばして棚からトレイを取り出す

 丸い筐体の家庭用ロボットは、荷物の運搬やスケジュール管理の機能を持つ。左右側面には折り畳み式のアームを備え、荷物は天版(頭の上)に載せて運ぶことができる。アームが掴むのは専用棚のトレイだ。「ロボットは、アームが届く範囲のトレイを持ってくることができ、使用した後はもとの場所に戻してくれる。常に片づけられた空間を保つことができる」という。

photo 前方にはカラーカメラとライト、スピーカーなどを備えている。側面にはアーム。ほかにウインカーランプや超音波センサーも内蔵

 たとえば、外出用の小物を1つのトレイにまとめておけば、外出時間にはロボットが玄関口まで持ってきて“お見送り”。また猫の餌などをトレイに入れておくと、ロボットは入力されたスケジュールに従って、時間になると“いつもの場所”へ餌を運ぶ。もちろんロボットのカメラを使い、外出先からペットの様子をうかがうこともできる。

photo ロボットがトレイごと運ぶことを考慮した棚。前面に青や赤で色分けされたカラーラインが見える

 トレイには、ロボットのアームが掴みやすい取っ手が用意され、色(カラーライン)やRFチップにより、ロボットがトレイの中身を特定できるようになっている。一方、ロボットが通る床は決まったサイズ(300×300ミリ)のタイルを組み合わせたもの。これは、ロボットが移動する際に距離を計測するためだ。さらに各部屋のドアにもカラーラインを用意するなど、ロボットの認識率を高める工夫が家の随所に施されている。

photo ロボットが共存することを前提として設計された住宅の模型

 「ロボットが実体のある存在である以上、段差や障害物の回避、ドアや窓の開閉といった物理的な作業が不可欠。作業をスムーズに進めるため、環境との整合性を含めたロボットデザインと、ロボットの動作に適した環境が重要になるだろう」。

 たとえば、展示されていたロボットは階段を上ることはできず、アームが届かない場所にあるものを持ってくることもできない。しかし、人間用の環境とロボットに適した環境が「歩み寄る」と、ロボットが活躍できる場は予想以上に広がるのかもしれない。

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