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圧縮音源もCDクオリティ――ビクターの高音質化技術「net K2」(2/2 ページ)

» 2005年09月15日 19時00分 公開
[渡邊宏,ITmedia]
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 2つめの伝送過程における音質変化要因の除去は、データ伝送時にノイズや歪みが混入しないようにする技術。デジタルデータは0と1で構成されているので、基本的にはノイズや歪みが混在する余地はないが、ジッターなどが混入することによって音質が変化してしまう可能性がある。この技術では、0と1の立ち上がりタイミングに関する情報(タイミング情報)を音楽データ(符号情報)と分離して伝送するため、データ受信側はより送信側の発信するデータに近い形でデータを受け取ることが可能になる。

photo タイミング情報を音楽データ(符号情報)と分離して伝送する
photo この技術の導入によってゆがみを最小限に抑えることができる

 ポスト処理技術は、再生機器側でデジタル化によって欠落した情報を補完する技術。CD-DAであれば16ビット/22.05キロヘルツのデジタルデータが収納されているが、この技術によって、再生機側で24ビット/88.2キロヘルツ(もしくは96キロヘルツ)までの拡張を行うことで、欠落した情報を補完し、高音質化をはかる。再生機側に専用のハードウェアは必要なく、ソフトウェアで処理が行えるのでポータブルプレーヤーや携帯電話へも技術転用が可能だ。

photo 再生機器においてポスト処理技術はD/Aコンバーターの前段階に入る

 ビクターグループでは、ハードウェア(音響機器)とソフトウェア(音楽)の双方の制作を手がけており、東京・千駄ヶ谷にはサザンオールスターズもレコーディングを行うという「ビクタースタジオ」を構えている。

 発表会に登場した高田英男氏(ビクタースタジオ スタジオ長)は「音楽制作の現場でアーティストやエンジニアは、CD以上のクオリティで、こだわり抜いた音作りを進めているが、圧縮音源ではその想いが伝わらない」と音質よりも利便性が重視されている現状を嘆き、「net K2によって、圧縮されて劣化した音質もCDクオリティまで向上する。マスターテープが持つ音楽の“感動”を音楽配信やポータブルプレーヤーでも味わってもらいたい」と述べた。

photo ビクタースタジオ スタジオ長の高田英男氏

 ビクターエンタテイメントでは、net K2によって高音質化をはかったWMAとATRACの圧縮音源データを10月1日より同社の音楽配信サービス「na@h!」から提供するほか、同社が楽曲を提供している各音楽配信サービスへも同様に提供する。携帯電話向けサービス「着うた」「着うた」「リングバックトーン」へも同様に提供を行う。なお、高音質化に伴う値上げは行われず、全曲、従来通りの価格で提供される。

 配信データは、配信される段階で既にK2プリ処理技術によって高音質化されているので、既存のポータブルプレーヤーでも「CDなみ」(同社)というクオリティを持つほか、日本ビクターの「XA-HD500」など、ポスト処理技術を搭載したプレーヤーで再生すればCDを上回るクオリティで音楽が楽しめるという。

 また、K2プリ処理技術については他社へライセンス供与していく計画であることを明らかにした。

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