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「QUALIA」の総括麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(3/4 ページ)

» 2005年09月30日 11時53分 公開
[西坂真人,ITmedia]

──ソニーの原点ともいうべきQUALIAのどこに問題があったのでしょうか。

麻倉氏: 作ってみたQUALIA製品のデキバエに問題があったのではないでしょうか。

 デジタル時代は技術革新が非常に速い。しかもその技術革新が決められたある規格の中で行われているのです。アナログ時代は、“企画”だけでなく“規格”でも差別化できましたが、デジタル時代は“企画”のみの勝負になる。しかも技術革新が速いので、新製品も次々と登場します。このような状況の中、ハイエンドでなおかつモノの価値観があり、モノを愛でるという対象になるべき製品はロングレンジに勝負できるものに限られてきます。

 そこでQUALIAをみてみると、例えばQUALIA005という昨年出たLEDの液晶テレビですが、画質を見るとトータルでは先日発表されたBRAVIAの方がいいのです。LEDを使ったQUALIA005という製品は、実験的ではあったものの、あれが名品として残っていくかという点では、そうではなかったということです。5年は持つ最高の製品でないと、商品の陳腐化が早くなる。液晶テレビというまだまだ発展途上の製品カテゴリーで、QUALIAブランドを展開したところに、根本的な問題があったのです。

 さらに問題だったのは、オーディオ製品なのではないでしょうか。CDプレーヤーで下からアームが出てくるといった動作上のユニークさはありましたが、“圧倒的に人を感動させるという音作り”というものが欠けていたと思います。本来の製品価値をしっかり極めたものでないと、QUALIAブランドを冠するべきではなかったのです。その意味で、小型デジカメQUALIA016の不具合・製品回収問題もQUALIAブランドの大きなイメージダウンになりました。

 それとは対照的に、非常にQUALIAらしい製品だったのがQUALIA015というブラウン管モニターです。ブラウン管はもうこれ以上技術革新はないだろうし、色再現性などは頂点の技術に達しています。ポイントは、この製品が生きている限り、最高の画質を提供し続けるというところ。こういうものこそ、QUALIAらしい製品といえるでしょう。

QUALIA発表時からよく「PCのQUALIAは作らないのか」という意見が出てましたが、PCのような製品サイクルの短いものにQUALIAはありえないのです。QUALIAはやはり、ロングレンジで勝負できるAV製品に限るのでしょう。

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──映像製品のQUALIAは評価が高いものが多いですね。

麻倉氏: そうですね。前述のLED液晶テレビは別にして、QUALIAの映像製品は、デジタル技術を使いながらも、他社が絶対真似できないところをやってきた。クリエーション・ボックスQUALIA001や、SXRDを使ったQUALIA004とQUALIA006は、圧倒的な名品というべき製品でしょう。これらの製品は、通常のラインからはなかなか出てこなかったモノであり、これこそはQUALIAプロジェクトの成果といってもいいでしょうね。そしてQUALIAから生まれたSXRDが、今ようやくフロントプロジェクターやリアプロなど普及製品に落とし込まれ始めました。これも大きな成果ですね。

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