本日、新しいiPodが登場した。
iPodがほかのどのプレイヤーより優位に立てたのは、つまるところ、他社のプレイヤーが「パソコン好きが音楽を聴くための製品」だったのに対し、iPodは終始「パソコン好きだろうとそうじゃなかろうと、音楽を聴く人みんなが楽しめる製品」を作ってきたからなのだ。わたしはそう思っている。
今回のiPodもそう。「動画対応」が一番の話題だけれども、カラー液晶を備えたプレーヤーに動画再生機能を付けるのは技術的に難しいことじゃないし、すでに実現している製品もある。
でも「動画対応したので、あとはみなさんが自分でコンテンツを用意して再生できるフォーマットでエンコードしてコピーして楽しんでね」では、パソコン好きの一部の人しか使いこなせない。それじゃあダメなのだ。動画対応をするなら再生できるコンテンツも用意して、誰もがそれを楽しめるようじゃなきゃいけない。
アップルコンピュータが面白いのは、それをちゃんとやってくるからなのだ。今回は極めて順当に、ミュージックビデオクリップのダウンロード販売とそれを再生する機能を付けた。これはいい選択だ。
ビデオクリップなら1本あたり数分なので電車の中のちょっとした時間でも観られるし、QVGAの解像度でも楽しめるし、ジャンル的にもiTunesの守備範囲内。
もちろん、ビデオポッドキャストにも対応しているし、自分でiPod対応にエンコードしたビデオ(QuickTime Proを使えばiPod用エンコードができる)も再生できる。けれども、ちゃんとiPod向けのコンテンツを用意した上で登場したことが一番重要なのだ。
発表会でも、iPodの機能として「Podcasts」「Home Movies」「Music Videos」と具体的に挙げてた。単に動画再生できます、じゃなくて、この3つのビデオを楽しめますって表現になっている。これが面白い。
でもそれだけじゃ弱いよね、というわけで、ディズニー傘下の米三大テレビネットワークのひとつABCの人気テレビドラマをダウンロードできるようにした。それも放送の翌日にダウンロード可能になる。
日本人には直接の関係はないけれども、テレビ番組をダウンロードというのはすごい。テレビ局はコンテンツの提供を普通はしたがらないし、ましてやストリーミングではなく「ダウンロード」なのだ。これが人気を博すればまた新しい展開が期待できる。
そういう意味では、今回はiPodよりiTunes 6とiTMSのビデオダウンロード対応が重要な発表だったといっていい。
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