次は、1987年竣工(当時は日本通信衛星株式会社)の“現局舎”に移動。こちらには各衛星の管制室があり、衛星の内部状態や静止衛星の軌道調整などを行っている。衛星内部の監視は「ハウス・キーピング」、場所を調整するのは「ステーション・キーピング」と呼ぶそうだ。
ステーション・キーピングは、衛星の現在位置と今後2週間の動きを予測しながら微調整を行う作業。赤道上空にある静止衛星は、地球の引力と遠心力が釣り合っている状態で地球の周囲を回っており、プラスマイナス100分の5度の間で静止している。端的にいえば「東西南北におよそ80キロメートルほどの直方体の中になければいけない」。ただ、そのままでは西に引っ張られるため、月に4回程度、小型ジェットを噴射して姿勢を姿勢と位置を修正する。
一方のハウス・キーピングは、衛星の温度や電圧、電流などさまざまな項目をテレメトリー(遠隔監視)するもの。制御用コンピュータで項目毎にアラームリミットを設定してあるため、常時人間がモニターを睨んでいるわけではないが、もちろん24時間365日体制だ。管制官は1日3交替制で勤務している。
管制官は、全員がポケベルを所持。もちろん携帯電話も別途所持しているが、トラブル発生時には担当部署の全員を呼び出す可能性が高く、同時配信できるポケベルのほうが都合がいいという。
このほか、地震などの災害発生時に備え、群馬県にも衛星管制センターが設けられている。こことほぼ同等の施設を“予備”のためだけに維持しているわけだ。「2つの管制センターは異なる岩盤の上にあり、仮にどちらかが地震などの被害を受けても継続して衛星の管制が行えるようになっています。ただ、イザという時に使えないと意味がないので、年に1回、1週間ほど全員が移動して、実際に群馬から管制を行います」。
しかも、災害発生時には電車などの公的な交通機関が使用できなくなる可能性が高いため、管制官は自家用車で現地集合するという。危機管理は徹底している。
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