“新しいNS”の序章――ヤマハ 新スピーカーシステム「NS-525シリーズ」(2/3 ページ)

» 2005年11月01日 00時00分 公開
[本田雅一,ITmedia]
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各部の“鳴り”を抑えダイレクト感とS/N感を大幅改善

 NS-515Fは日本ではヒット商品となったスピーカーだが、欧州での評価は日本ほど高くなかったという。実際に音を聴いてみると、確かにピュアサウンド向きとは言いがたい。エンクロージャ(外箱)がスピーカーコーンの駆動に合わせて振動し、それが“箱鳴り”として聴こえる。

 低域の量感はたっぷりとして迫力は出るが、緩く膨らみ、やや遅れて耳に飛び込んでくるタイプ。また中域から高域にかけての歪み感も目立ち、元気よく鳴るものの平板的という印象を持っていた。もっとも「ボーカル帯域(特に女性ボーカル)の艶」はあり、これはナチュラルサウンドの原点でもある。

 「NS-515FをCADシミュレーションで解析したり、様々な測定器で計測。さらにB&Wなど評価の高い欧州製スピーカーを分解し、ユニットやキャビネットの構造などを徹底解析し、我々のスピーカーとの違いを調べました」(岡崎氏)

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 その結果、決定的な違いとして判明したのが、スピーカーユニットの構造だったという。NS-515Fは同じウーファーユニット2個を、中域と低域で使い分けた3ウェイスピーカーだった。スリムなトールボーイ型スピーカーには多い設定だが、欧州製スピーカーは同じ口径のユニットでも、中域と低域を再生帯域に応じて異なる仕様にしていたという。

 またユニットのフレームも、NS-515Fが金属板をプレスしていたのに対し、欧州製スピーカーはダイキャスト製。スピーカーコーンを駆動する磁気回路を支える構造に、そもそもの違いがあった。

 「この違いを改善しようとすると、部材レベルの対応だけで5000円ほど価格が上がりコスト的には厳しい。しかし、海外他社のトールボーイと同レベルに引き上げるには、基本構造の改善は必要不可欠です。必要なところには、キチンとコストをかけようじゃないかと考え、思い切って贅沢なユニット構造を採用しています」(飛世氏)

 「贅沢さという意味では、各ユニットの帯域や位相を合わせるネットワーク回路に使われるコンデンサーにも配慮しています。欧州のスピーカーには仏SOLEN社のコンデンサーがよく使われている。SOLENのコンデンサーは音は良いのですが、コスト的にはかなりオーバーしてしまう。そこでネットワークの特性を変え、回路をシンプルにすることでコンデンサーの数を減らしたのです。すると、同じSOLEN製コンデンサーで比較した場合でも、明らかに音の透明感、抜けが良くなりました。回路がシンプルになることで、音の鮮度が失われなくなったのでしょう」(岡崎氏)

photo ネットワーク回路に使われるコンデンサーにも配慮

 極めつけはエンクロージャーだろう。NS-515FとNS-525Fは同クラスの製品で、見た目もほとんど変わらないが、エンクロージャーの構造は1クラス上になったと言っていい違いがある。各部に補強メンバー(スラント&クロスパーティション構造)を張り巡らし、NS-515Fでは意図的に出していた箱鳴りを抑制。スピーカーユニットが生み出すダイレクトな空気の振動を生かすエンクロージャーとなり、従来モデルのように低域が遅れてリスナーに届く印象が全くなくなっている。

photo 箱鳴りを抑えたNS-525Fのエンクロージャー

 素材面でもパーティクルボードをMDFへと変更し、フロントバッフルの左右端には音の回折を和らげるため丸みを付ける加工が施された。これら筐体加工に絡む部分は人の手が多く関わるだけに、コスト面ではかなり厳しいはずだ。

 「キャビネット生産を行う工場も、下がったコストの中で良いもの、複雑な加工をこなしていかなければ、工場として生き残っていけません。最終製品が改善され、それが売れれば工場にも追加発注として還元されます。そうした話をしながら、少しづつ理解を頂いて高剛性で箱鳴りしないNS-525Fを、NS-515Fと変わらない値段で提供できるようになったのです」(飛世氏)

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提供:ヤマハエレクトロニクスマーケティング株式会社
制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2005年11月30日