“新しいNS”の序章――ヤマハ 新スピーカーシステム「NS-525シリーズ」(3/3 ページ)

» 2005年11月01日 00時00分 公開
[本田雅一,ITmedia]
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雑味を抑えた中高域が魅力

 なるほど、かなりのコダワリを持って作られた製品であることはよくわかった。では実際の音はどうなのだろうか?

 箱鳴りを抑え、スピーカーユニットのフレーム剛性も上がったNS-525Fは、出音させるとすぐに低域のパンチ力が大きく上がっている事がわかる。確かに量はそこそこ。ブーミーなところは全く感じない。しかし立ち上がりのスピード感、低域の遅れがないクリアでスッキリとした音の消え際など、音楽的な面での低域はオーディオ用スピーカーらしい仕上がりとなった。

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 NS-525Fを2chステレオで聴いてみて、あえて注文を付けるならば、音量を上げた時のウーファーの“ツキ”や、最低域部の腹に響くような音での音圧感が欲しいとも思うが、トールボーイ型という本スピーカーの形状を考えれば、十分な再生能力ではある。NS-515Fのブーミーな雰囲気が消えただけでも、十分に大きな進化ではないか。

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NS-525Fに使われたアドバンスドPMDコーンウーファーの内部構造

 しかしNS-525Fの魅力は中域から高域にかけての質感の高さだろう。新開発アドバンスドPMD振動板を採用した中域ユニットは、低域ユニットとは異なる厚みのコーンとすることで軽量化。微弱な音楽信号にもレスポンスする。このことがボーカルの質を引き上げ、歌い手の細かい息づかいまでも正確に再生する。歪み感の少なさはS/Nの良さにもつながり、NS-515Fでは聞こえてこなかった音が音場の中に明確に浮かび上がり、それがサウンドステージに立体感を加えている。

 加えて高域ユニット。振動板の素材や形状は従来と同じとの事だが、マグネットの中心に穴を開け、振動板のドーム内にこもっていた音を背後に抜き、背面にキャビティを作るようにした。これだけのことだが、スッキリと透明感のある、なんとも気持ちの良い高域へと様変わりしている。

 金属素材のツイータは、高域を延ばして透明感を出そうとすると、やや聴きづらく耳への刺激が強い音になりやすい。NS-525Fもそうした傾向があるのでは? とやや疑いつつ聴いてみたが、耳障りにならない、ギリギリ一歩手前にチューニングされており、メタルドーム特有の高域の伸びやかさを生かしつつ、耳への刺激が抑え込まれている。

photo 金属素材を採用したツィーター

 ペアでの実売が10万円前後という売れ筋クラスを考えると、これほどオーディオ的素養を備えたスピーカーは少ない。開発を担当した2人は「デキは90点。自分たちの中ではこのクラスで出来ることはすべてやったという自信があるが、それが市場の目から見てどのように受け取ってもらえるか」と控えめに話す。

 だが、柔らかで刺激感や歪み感の少ない、しかし締まった低音というかつてのヤマハ製スピーカーの伝統は、しっかりとNS-525Fへと隔世遺伝し、さらに従来以上のキレやスピード感をも伴っている。それは過去のナチュラルサウンドを支えたNS-1000Mなどとは異なるものだが、しかし明らかに同じ遺伝子を引き継いでいる。

 ヤマハスピーカーはNS復活ののろしを上げ始めた。

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制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2005年11月30日