三菱電機が発売した新型DLPプロジェクター「LVP-HC3000」は、様々な意味で予想を大きく裏切る製品だ。”予想を裏切る”と言っても、決して悪い意味での裏切りではない。実勢価格で25万円を切る低価格DLP機でありながら、その価格クラスから想像されるDLPの絵を大きく超える高い表現力を持っているからだ。
DLPは透過型液晶パネルを用いたプロジェクターに比べ、黒が引き締まったハイコントラストな映像を投影する事で知られているが、一方で暗部の細かな階調の描き分けは不得手でノイジーなざわつきもある。
ところが新型パネルとともに採用された新型フォーマッタボードを用い、絵作りを追い込んだLVP-HC3000は、クラスを超えた画質を持っていた。
DLPはデバイスレベルでの絶対的なコントラストが高く、白ピークを伸ばしても黒レベルを低く抑える事ができる。もちろん、DLPと一言で言っても、ミラーがオフの状態の光をどのように逃がすかや、漏れ光の処理、レンズなどでもコントラストは異なる。しかし、LVP-HC3000は徹底したハイコントラスト志向の設計で4000:1のコントラストを実現している。
本機に採用されている0.61インチWXGAのDMDチップは、コントラスト向上プロセスがDarkchip 2であり、よりコントラストを向上させたDarkchip 3(一部100万円クラスのハイエンドDLPに採用)は採用していない。しかし、それを光学回路の設計でカバーしている
ただしコントラストを上げるために犠牲になっている部分もある。設置性である。LVP-HC3000で投影される映像は下端がレンズセンターよりも上となり、左右・上下ともにレンズシフト機能はない。加えてレンズ焦点距離は長めでズーム倍率は1.2倍と狭めだ。
16:9の100インチスクリーンへの投射距離は3.6〜4.4メートルで、このとき画面下端はレンズセンターよりも42センチ上に来る(天井吊り下げの場合は、画面上端がレンズセンターよりも42センチ下)。
製品を担当する三菱電機の佐藤岳氏は「ズーム比小さく、投射距離長く、シフトもしない三重苦」と自嘲気味に話していたが、それもこれも「画質だけは絶対にどこにも負けないように」との考えがあったからだったという。なお、このレンズは昨年のLVP-HC900Jから採用されているものだ。
実際、LVP-HC3000から出てくる絵は素晴らしい。単純にコントラストが高いだけではなく、同クラスの720Pプロジェクターの中ではダントツに緻密で高精細。高発色で、なおかつ高彩度領域にかけて無理のない階調で伸びていく。
高精細といっても、細かなディテール感を損なわずに描くという意味で、輪郭の強調感はない。むしろソフトと言える仕上げだ。カリッとしたエッジ感が欲しいユーザーはシャープネスを少し上げた方がいいだろうが、筆者のお薦めはデフォルトのまま。ボケてテクスチャのディテールが失われるわけではなく、あくまで強調感を出さない方向のチューニングである。
このあたりの細やかなコダワリを感じるチューニングが、電源をオンにしただけで得られるというのはなかなかいい。
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