またアイリス(絞り)をフレーム単位で動的に制御するダイナミックアイリスの使い方も実に自然で、違和感を感じさせない。通常のシーンでは黒浮きが目立たないよう閉め気味に制御しておき、明るいシーンではキュッと開いて輝度を稼ぐ。特に太陽が直接写り込んだり、金属部分が輝いて見えるシーンなどで、眩しさを見ている側に印象づける制御が巧妙だ。
ダイナミックアイリスについては、同一画面内でのコントラスト比ではないから意味がないとの批判もあるが、個人的には上手に使えば有効な機能だと考えている。確かにアイリスの全閉と全開を比較したコントラスト比表示は、画質に直結しない数値だ。本機も最大5500:1をうたっているが、機械としてのスペック値という以上には意味を持たない数字ではある。
テレビ番組や日本のアニメ番組を中心に見るならば、あまり意味はないだろう。しかし、映画のように時間軸の中で輝度のレンジを変化させながら映像表現を行うソースにおいて、アイリスの動的制御は有効だ。ただし、その制御方法によって、その有効性も、弊害も機種によって様々ということだ。
TH-AE900におけるそれは、非常に有効に働きながらも不自然さを感じさせないため、積極的に使うのが良いだろう。弊害と言えるような場面には、ほとんど出くわすことはなかった。
ダイナミックアイリスの巧妙さとともに触れておきたいのが、新スムーススクリーンだ。スムーススクリーンは複屈折(光が多方向に屈折する性質)素材を使うことで、透過型液晶パネルの格子を目立たなくする一種の光学フィルターである。ただし従来のスムーススクリーンは、輝点が二股に分かれるだけで、画素がきれいに光で埋まらず、加えて光がにじんだように広がる傾向もあったため、フォーカス感が低下する割にはなめらかさが向上しない印象だった。
しかし新スムーススクリーンは、複屈折層を3層重ねたフィルターを用い、DLPやLCOSプロジェクターのように四角く格子がきれいに埋められた画素形状を実現している。輪郭の甘さが残るとの指摘もあるようだが、画素のなめらかなつながりの方が画質面で大きく寄与する。
本機に搭載されるランプは135ワットで、ライバル中、もっともランプパワーは低い。確かに、やや明るさを残したモードとなるとダイナミックモードしかなく、このときはランプパワーの余裕のなさからか、かなり緑にシフトした濁りのある発色となる。
しかし暗室状態で利用したモードでは、きちんとランプのクセも調教される。その際の明るさも、ダイナミックアイリスの出来の良さもあって問題は感じない。ランプパワーの違いによる不利は、少なくとも暗い部屋で高画質を楽しみたいというユーザーには良さそうだ。
主に使用する画調モードは「シネマ1」「シネマ2」「シネマ3」「ノーマル」の4種類だろう。シネマ1は冒頭でも紹介したデビッド・バーンスタイン氏が監修したモード、シネマ2は松下の技術者と映画関係者が作ったモード、シネマ3はハイライトとシャドウにメリハリを付け彩度ものばしたモード、ノーマルは絵をさほど作らずニュートラルに仕上げた上でシネマ系よりも若干明るめの絵作りをしたモードだ。
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