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パーソナル・アーカイブの勧め小寺信良(2/3 ページ)

» 2005年12月26日 13時50分 公開
[小寺信良,ITmedia]

 例えば各放送局は、自社で番組アーカイブを持っている。NHKの場合は、川口にある「NHKアーカイブス」がそれに相当する。ここはすでに放送した番組を分類して保存しておき、必要なときに資料映像として再利用するための、巨大な保管庫だ。

 しかしただ放送テープが存在するだけでは、必要なときに探せない。春日三球の地下鉄ネタじゃあるまいし、「確かこの辺に埋めたよなー」では済まされないのである。そこで重要になるのが、番組情報のメタデータだ。これには後から必要な映像を局内のイントラネット上で検索できるように、その番組に関する様々な情報をテキスト化してデータベース化しておくわけである。

 個人でアーカイブを構築する際に、このようなメタデータと連動した管理ができれば理想的だ。デジカメの写真の場合は、EXIFデータが役に立つ。少なくとも、何月何日の何時に撮影したか、というデータは、いつでも参照することができる。

 筆者は以前から、写真のブラウザとしてThumbs Plusというソフトを使っている。いや、別にこれがお勧めというわけではなく、単に古くから成り行きで使い続けているだけなので、今はほかにもいいブラウザが沢山あるだろう。

 このソフトのメリットは、EXIFに含まれるパラメータ別にソートできることである。これまでデジカメ写真の管理は、撮影日ごとにフォルダを分けて保存していたのだが、そもそもメタデータが参照できるのであれば、これはあまり意味を成さないということに気がついた。

 そこで家族写真のアーカイブでは、すべて1フォルダ内に入れることにした。こうしておけば、サムネイルで一気に閲覧できるし、時系列順に並び替えることもできる。

デジタル世代の「アルバム」とは

 多くの読者諸氏もそうだと思うが、我々が子供の頃は、家族のそれぞれに、生まれた時からの写真が貼られたアルバムがあったはずだ。さすがに父母のアルバムには、子供の頃の写真は数えるほどしかなかったが、その失われた時間を取り戻すかのように、筆者ら子供の写真を沢山撮ってくれた。

 筆者に長女が生まれたのは今から12年前の事で、初めてデジカメを買ったときはもう幼稚園ぐらいにはなっていただろう。それ以前は当然フィルムで写真を撮っており、その時分までのアルバムは、妻が一生懸命作ったものがある。

 だが成長記録の写真がデジタル化して以来、それをプリントしてまで紙のアルバムにするというところまでは、まったくできていない。下の子などは、生まれたときから記録はデジカメである。それこそフィルム時代では考えられなかった量の写真を撮ることが可能になったわけだが、それらを系統立てて整理するということを怠ってしまっている。

 筆者などは子供の頃に、自分のアルバムを時折眺めては、一緒に写っている親の顔に愛情の一片を感じ取ったものだ。アルバムを持たない今の子供達は、何を以て親の愛情を感じ取るのだろうか。デジカメの登場以来、もしかしたら写真は、すごく撮り手側のワガママなツールとなってしまったのかも知れない。

 写真はやはり、見てその価値をかみしめるべきものであるべきだろう。CD-Rに死蔵しているだけでは、その写真は全く生きていない。実際に家族写真のアーカイブを作ってみて、すごく反省した。

 だが筆者が写真を見ているだけでは、まだ不十分である。やはり家族それぞれが、自由に閲覧できてこそのアーカイブだろう。一番確実なのは、やはり物理的に紙メディアにしてしまうことなのかもしれないが、なんだかもはやそういう時代ではないようにも思う。

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