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パーソナル・アーカイブの勧め小寺信良(3/3 ページ)

» 2005年12月26日 13時50分 公開
[小寺信良,ITmedia]
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 今の時点で考えられる写真ビューワーとして、1つにはPCがある。これは元々NAS内にアーカイブがあるわけだから、ホームネットワーク上のPCからはどれでも見ることができる。

 もう一つ考えられるビューワーとしては、テレビだろう。しかしホームネットワークに接続できるテレビは今のところ、そう多くはない。DLNAクライアントとして使えるのは、ソニー BRAVIA Xシリーズか、東芝 face Z1000シリーズぐらいだろうか。

 ただ、テレビ自体がクライアントにならなくても、テレビに接続する機器が対応している可能性は高い。以前からPC周辺機器メーカーがリリースしてきたネットワーク対応型DVDプレーヤーでは、ネットワーク越しのフォトビューワー機能を備えているものも少なくない。これらはDLNAガイドラインを待たずに独自規格でスタートしたものも多かったが、徐々にDLNA対応にシフトしてきている。

 意外にできそうでできないのが、DVDレコーダーだ。メモリを挿してそれが内部HDDに取り込めたり、表示できるというものはいくつかあるが、ネットワークと写真を絡めて考えてあるものはないようだ。もっともこれはレコーダー自体が、すべてのコンテンツを集約するメディアセンター的な傾向を持ち始めており、ネットワーク上の写真を見るという方向性とは相反すると見るのが妥当かもしれない。

 筆者は以前、「写真と日本人」というコラムの中で、iPodに写真表示機能があることに関して否定的な考えを述べた。だが今、我々には写真を貼った思い出のアルバムなどないのだ、という視点に立ってみると、あの機能はもっと別の意味として使えるのではないかという気がする。

 つまり米国人ライクに家族の写真を持ち歩き、人との会話の糸口に使うというようなことではなく、子供達が家族の絆や親の愛情を感じるための「アルバム」として、iPodの写真機能が存在してもいいのかな、とも思うのである。子供が自分のアルバムを見たいと思ったときに、パソコンを立ち上げたりテレビを点けたりするというのは、あまりにも回りくどい。おそらくそういう行動パターンは、あり得ないだろう。

 だがiPodからいつでも見られるよ、と言うことになれば、それは自分のアルバムだということにならないだろうか。もちろん現状のiPodは写真のコピーを本体内に持つというスタイルであり、この方法にはプライバシーの流出といった問題とつながってくる。最近のiPodに暗証番号でロックする機能が付けられたのは、こういう意味合いもあるだろう。

 筆者自身は、写真をローカル側に全部持っておくという事に関しては、非効率的であり、否定的に考えている。ただiPodに限らずほかのデバイス、例えばポータブルゲーム機や携帯電話のようなものが、ネットワーク経由で写真をブラウズする機能を持つということは、かつての「アルバム」的なあり方として正しいように思える。

 未来の「アルバム」とは、自分が最もよく使うデジタルツールでアクセスできるアーカイブである、というところに落ち着くのかも知れない。


小寺信良氏は映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。

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