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23ミリの衝撃! 2つのレンズで超広角を実現――コダック「V570」レビュー(2/5 ページ)

» 2006年01月10日 10時58分 公開
[小山安博,ITmedia]

23ミリの新世界

 デザインに関してはこれぐらいにして、撮影機能にも目を向けてみよう。電源ボタンを押すとレンズバリアがスライドする。まず驚くのが、そこから現れた上下に並ぶ2つのレンズ。これが、今回のV570の最大の特徴と言える「コダック レチナ デュアルレンズ テクノロジー」だ。

photo 2つのレンズが並ぶ独特の外観。上が23ミリのウルトラワイド、下が39ミリからのズームレンズ

 イメージとしては二眼カメラであるが、もちろん、二眼カメラとは目的も構造も異なる技術だ。この2つのレンズはそれぞれが別の焦点距離をカバーしており、スペック上は23〜117ミリ相当をカバーする5倍ズーム機になる。23ミリの広角側は上のレンズ、39〜117ミリは下のレンズが担当することで、疑似的に広角ズームレンズをこの小型の筐体に詰め込んだのだ。

 レンズとしては23ミリ側の「ウルトラワイド」が単焦点で4群5枚+プリズムレンズ×1、39ミリからの光学ズーム側が7群10枚+プリズムレンズ×1という構成。F値はウルトラワイドがF2.8、光学ズームがF3.9〜F4.4となっている。

 2種類のレンズを使っているわけだが、コダックでは混乱を避けるために2つをあわせて「シュナイダー クロイツナッハ C-バリオゴン プリズム レンズ」とし、これをデュアルレンズ テクノロジーでまるで1つのレンズのように使えるようにした、と言うわけだ。

 実際に使ってみると、確かに2種類のレンズを使っていることを意識させない。23ミリのウルトラワイドは固定焦点だが、ズームボタンを押すとデジタルズームで拡大、39ミリに達する時点で自動的に使うレンズが切り替わり、その後は光学ズームで117ミリまでズーミングする。デジタルズーム機能をオフにすると、23ミリからズーミングをするといきなり39ミリに切り替わる仕組みだ。

photo ズームボタンを押したところ。赤い部分はデジタルズーム

 特にデジタルズームを使っているとレンズの一体感が高まる。いったん39ミリまでデジタルズームした時点でズームが止まり、もう一度ズームボタンを押し直す必要はあるが、2つのレンズを使っていることはあまり意識されない。

 広角レンズは、通常は開発は難しく、レンズも大型になりがちだ。23ミリという広角ズームレンズとなると、さらに大型化してしまうが、コダックでは23ミリ側は単焦点レンズに任せ、光学ズームは39ミリからにすることでこの問題をクリアした。単焦点で23ミリというと、「超広角」と呼ぶにはやや足りないところだが、一般的なコンパクトデジカメに慣れていると、「超広角」と感じる写真が撮れる。

 23ミリになると、レンズの歪みはその分大きくなるが、とにかく想像以上に広い範囲を撮影でき、使っていて楽しい。またこのウルトラワイドではパンフォーカスになるため、ピント合わせの必要がない点もいい。AF機構の省略は、レンズの小型化などのためなのかもしれないが、広角の写真を気軽に、シャッターをただ押すだけで撮れるのは実に快適だ。ちなみにウルトラワイド側の撮影可能範囲は80センチから∞だ。

 一般的な光学3倍ズーム機を使っている人ならば、この広角の世界は、全くの新世界に感じるだろう。使いこなしの難しい画角ではあるが、広い風景を撮りたいとき、室内全体を撮りたいとき、大勢を1枚の写真に収めたいとき……こうした広角レンズを使いたいと思う場面はいろいろある。芸術的な作品を撮影したいというのでなければ、特にパンフォーカスのこのカメラを使って、何も考えずに広角を楽しめばいい。

 また、望遠側については117ミリまでカバーしているのもうれしい。ズーミングはのっそりという感じで、小さな丸いズームボタンもそれほど押しやすいとは言えないが、実質的に5倍ズームを実現している点はポイントが高い。

 ちなみにこのレチナ デュアルレンズ テクノロジーの“レチナ”は、英語では「Retina」で、レンズの「Retinar」ではなく、コダックのクラシックカメラのRetinaと同じ表記になる。技術的な関連性はないようだが、現在のパトローネ入り35ミリフィルムを最初に世に送り出したRetinaと今回の技術が、「革新」という意味で共通している、ということからRetinaの名を冠したらしい。

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