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CESで分かったデジタルの新しいトレンド麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(3/5 ページ)

» 2006年01月31日 23時59分 公開
[西坂真人,ITmedia]

――今回の松下はわずか1インチ大きな103インチでした。LG電子もサムスンと同じ102インチを披露しました。なぜ“100+数インチ”の攻防になるのでしょうか?

麻倉氏: これらの“世界最大”は、50インチPDPを4面取りするマザーガラスを使って作られているからです。プラス数インチは、マザーガラスのミミ(マージン)の部分まで使い切ることで実現しているのです。松下の場合も、尼崎工場での4面取り用マザーガラスを使っているのですが、センターのミミのところを若干多めにとってギリギリまで使って作りました。松下がイチバン心配だったのは、開幕前日に発表して苦渋をなめた一昨年前のLG電子のように、開幕日のサムスンブースに103インチを超えるプラズマが展示されてはいないかということでした。しかし、サムスンブースには昨年と同じ102インチが展示されいるだけでした。たった1インチとはいえ、松下の“世界最大”は画期的なことといえるでしょう。

――好調な松下を象徴している出来事でしたね。

麻倉氏: ええ。松下のすごいところは、大きいだけでなく画質が優れている点です。松下は2005年に米国でプラズマテレビのシェアを50%にまで広げているのですが、これはサプライチェーン改善や店員教育の徹底などのほかに、2005年のビエラが非常に画質がよかったというのがシェア拡大に大きく貢献しています。今回の103インチには2006年モデルの最新パネルが採用されているのですが、これがまた非常にキレイになっているのです。単に大きいものを作るのだけでしたら、突貫精神で「えいやっ」で作れるかもしれませんが、画質がともなったものを作るというのは、なかなか難しいのです。今回のCESでは、“画質”という日本のコアコンピタンスをあらためて再認識しました。どこのとは言いませんが、ライバルの100インチを超えたプラズマ・テレビの画質は驚くほどのものでしたからね。この103インチは販売も視野に入れており、売り出すとしたら10万ドル、5万ドル、2つの選択肢がある……といったウワサも出ています。

――CESでの大画面そのほかの動きは?

麻倉氏: “ビヨンド・ザ・フルHD”ということで、1080PのフルHDは今や当たり前の時代となったことが今回のCESを通して実感しました。もはや単に高精細さを争う段階ではなく、その一歩先となる色再現の争いがCESでは繰り広げられました。そのひとつが、LEDによって色域を広げるという技術を盛り込んだディスプレイを各社が出してきたことです。サムスンとソニーは両社による液晶生産拠点S-LCDで作った82インチの世界最大液晶テレビにLEDバックライトを組み合わせて展示していましたが、特にソニーのは世界で初めて動画色空間規格の「xvYCC」にも対応しており、撮影した映像の色をそのまま再現できるというスグレモノです。このような技術的なもののほか、SEDが米国で初めてショーデビューしたということもトピックスですね。SEDがまず米国で狙うのはプロフェッショナル向け市場。SEDならではのホンモノの色再現性を訴えて、支持を獲得しようとしています。

photo サムスンは82インチの世界最大液晶テレビにLEDバックライトを組み合わせて展示
photo ソニーの82インチ液晶テレビは、世界初の動画色空間規格「xvYCC」対応

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