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CESで分かったデジタルの新しいトレンド麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(4/5 ページ)

» 2006年01月31日 23時59分 公開
[西坂真人,ITmedia]

――最後に3番目のトレンド“3つのA”について教えて下さい。

麻倉氏: 3つのA(Anytime、Anywhere、Anyhow)つまり「いつでも、どこでも、どのようにでも」というユビキタスといわれる概念ですが、私がいいたいのは、映像を持ち出す時代になったということです。これまで、持ち出すものとしては音声(音楽)が中心だったのですが、ここにきて、今回のCESでの展示・発表をみると、家の中で映像を観るだけではなく、いつでもどこでも映像を持ち出して見るという提案が数多く見られました。

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 この背景には、メディアと端末が非常な勢いで多様化しているということがあります。従来は放送を通じてコンテンツを提供していたのが、放送だけでなく通信を通じてだったり、ケーブルが担ったり、携帯電話によるデリバリーも出てきました。。また、パッケージメディアとしてだけでなく、ダウンロードとしてコンテンツを家に運ぶという動きもあります。そして家の中では、従来は別々の機器で受け取っていたのが、メディアセンターという大容量のサーバでまとめて受け取って、それを家庭内の各部屋に分配するという提案もなされてきました。インテルまでがViivというコンテンツ視聴のプラットフォームを提案したのが印象的ですね

 いかに映像を外に持ち出すかというテーマの答えのひとつがソニーのロケーションフリーです。自宅にセットしておくだけで、世界中どこでも、日本の番組を観ることができ、さらにPSPと連携することで手軽に持ち出すことが可能になりました。

 そして、ToGoというコンセプトがいよいよ本格化してきました。例えば、ディッシュ・ネットワークではHDプログラムが充実しているのですが、HDD付きのサーバに落として家の中ではHD画質で観ることができるとともに、USB経由でポケットディシュという携帯型ビューワにコピーもできるのです。ポイントは、ポケットディッシュで外に持ち出す時の映像はHD画質ではなく携帯型ビューワの解像度に応じた画質に落として“コピー”させているというところ。TiVoやDirecTVなど専門チャンネル系のセットボックスには、このToGoの概念が取り入れられています。

 ToGoはコピー可能だからできますね。それに関連してCESで、急に注目されるようになったのが、「マネージド・コピー」という概念でした。まずHD−DVDで提唱され、いまではBlu−ray Discも載りました。つまり、「管理されたコピー」ということで、ディスクのコンテンツをハードディスクや、メモリーカードなどにコピーできたり、ホームネットワークに流すことができるのです。パッケージメディアにバックアップすることも可能です、多分有料でしょうが。

 コンテンツとは、ひとつの方法だけで再生する(DVDなら、プレーヤーで再生)ものという時代は終わり、どこでも、いつでも楽しむものだという概念から出てきたコンセプトですね。日本のコピーワンスのようにコンテンツを一カ所に閉じこめるのではなく、逆にコピー環境を積極的につくることで、新しい体験をユーザーに与えようと発想であり、さすがはアメリカだと思いました。これから、コピーできないコンテンツは、意味がないということになるのでしょう。日本のコピーワンス信奉者に教えてあげたいですね。

 もうひとつはQualcommの携帯電話向け放送サービス「MediaFLO」が、いよいよ米国でスタートするということですね。CES会場では実機によるデモンストレーションが行われていました。携帯電話の中にテレビが入って、映像を持ち出していつでもどこでも観るという流れです。

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