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PCモニタの終焉がもたらす「マルチキャストルーム」構想小寺信良(2/3 ページ)

» 2006年02月06日 10時20分 公開
[小寺信良,ITmedia]

 また逆に、PC側からのアプローチも存在する。同じくソニーのVAIO Type X Livingでは、nVIDIAのグラフィックスカードを使ってHDMI出力を実現した。もちろんPC画面をテレビモニタに映すには、オーバースキャンの問題など解決しなければならないハードルもあるが、それでも汎用グラフィックスカードでTV出力を出すということが、技術的に可能であることを証明したのである。

 つまりPC画面は、2つのアプローチいずれを取るにしても、テレビに出せるのだ。

 逆にPCモニタ側にも、テレビモニタへ進出しようという動きもないではない。例えばナナオなどは、早くからテレビモニタへのアプローチを見せているが、ブランドイメージの違和感もあって、あまりぱっとしないというのが正直なところだ。

 個人的な話で恐縮だが、1月の半ばにこれまで使っていたイーヤマのPC用20インチ液晶モニタが壊れてしまった。そこで新しいモニタを買うべく、いろいろと各メーカーのサイトを眺めながら比較検討した結果、大型ながら高さが抑えられるEIZOの「FlexScan S2410W」を購入した。

 24.1インチで解像度1920×1200、テレビで言えばフルHDパネル相当の液晶モニタが、15万円台で買えるという現実は、驚くべき事態だ。そしてこのモニタを眺めていて当然わき起こるのが、「このモニタにチューナー付けてハイビジョンテレビにならんのか?」という疑問である。

 細かい差異はいくらでもあるだろう。だがそれを乗り越えるのが、エンジニアの仕事である。今後の市場では、テレビとPCモニタがお互いを取り込み合う状態に推移する可能性は高い。

デカいPCモニタへのニーズ

 テレビとPC用モニタを一元化するための技術的ハードルは、メーカーのエンジニアに任せるとして、ここではそれで描けるビジョンを考えてみたい。ゴールの絵があれば、産業とはそれに向かって勝手に進むものなのである。

 ここでまず、パソコン世代のファーストエイジが今何歳ぐらいかを考えてみよう。今のようなパソコンの前身となったのは、いわゆるワンボードマイコンであろう。マイコンブームの火付け役となったのは、NECの「TK-80」であると言われている。

 これの発売が、今から丁度30年前の1976年。中学・高校生でこれにハマった人たちがパソコンのファーストエイジだとするならば、すでに43〜48歳ぐらいにはなっている。当時社会人だったという人なら、もう50歳をとうに過ぎているだろう。

 40歳を過ぎてPCを使う時に問題になるのが、視力である。つまり40を過ぎると、誰でも徐々に老眼になるのだ。すると高解像度モニタに映し出される小さい文字が、読めなくなる。

 ブラウザやOSの設定で文字を大きくするというのも一つの手だが、それでは高解像度モニタを使う意味がない。そこで登場するソリューションが、「大型テレビサイズのPCモニタ」の必要性だ。

 すなわち42や50インチぐらいの大きなテレビ/PC兼用マルチモニタを、2メートルぐらい前方に設置する。手元のテーブルにはキーボードとマウス。大型モニタを楽に見下ろすような姿勢だ。解像度はフルHD程度あれば、デスクトップの広さとしてはまず問題ない。

 こういう使用スタイルが求められる時代は、もうすでに来ているのである。Blogなどを読むと、若いPCユーザーには老人がパソコンを使う姿など想像できないという。だがあと10年足らずのうちに、パソコン自作ブームを築いたベテランPCユーザーが徐々に定年退職し始める時代が来るのだ。

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