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ライブビューって画期的なの?――「E-330」の商品企画担当者に聞く永山昌克インタビュー連載(2/3 ページ)

» 2006年02月16日 13時30分 公開
[永山昌克,ITmedia]

2つのセンサーによる2種類のライブビュー

――2つのセンサーを載せるアイデアは、どうして生まれたのですか?

堀田氏: ライブビューといえば、コンパクトデジカメのように撮像素子によるライブビューを発想するのが一般的な考えかもしれません。しかし、一眼レフ機には撮像素子の前にシャッターとミラーがあるため、撮像素子によるライブビューは困難です。AFを外すことはできませんし、かといってコンパクトデジカメのように、撮像素子上のコントラスト検出方式のAFでは十分なスピードが得られません。そこで、ライブビューの専用CCDを搭載し、ポロ光学系のファインダーを通してライブビューを実現しようと考えました。これが「フルタイムライブビュー」モードです。

 ただし、フルタイムライブビューはファインダーを通すため視野率は100%にはなりません。一眼レフ機ではAFだけでなく、100%の表示も重要です。そこで、撮像素子のLiveMOSセンサーを利用したライブビューとして「マクロライブビュー」モードを搭載しました。こちらのモードでは、AFは使えずマニュアルフォーカスのみとなりますが、100%の視野率を提供し、10倍の拡大表示によるMFが可能です。

 ちなみに、撮像素子によるライブビューには、ダストリダクションシステムが欠かせません。ライブビューの間ずっと撮像部分がむき出しになっているため、レンズ部から内部へとゴミやホコリが入り込んでしまう危険性があります。現時点では、まだ他社が追従できていないダストリダクションシステムは、ライブビュー開発においても当社の強みだと思っています。

photo これらの取材写真そのものもE-330で撮影した

――マクロライブビューのほうに、コントラスト検出方式のAFを載せることは無理ですか?

堀田氏: コンパクト機に比べて、被写界深度が浅い一眼レフ機では、特に大口径レンズを使った場合やコントラストが低いシーンでは、正確にピントを合わせるのは困難です。またAFスピードにも課題が残ります。今後、撮像素子を使いながら、なんらかの形でAFの精度やスピードの問題を解決していく方向ももちろんあります。ただ、E-330がライブビューの第一号機として2つのモードを搭載したことは現時点でのベストな選択だと考えています。

――想定するユーザーターゲットは?

堀田氏: ファインダーから開放されることの素晴らしさを、まず分かっていただけるのは、ハイアマチュア以上のユーザーだと考えます。すでにデジタル一眼レフ機を使いこなしている人であれば、一眼レフ機によるライブビュー撮影の利点を十分に感じていただけるはずです。とはいえE-330は、ハイアマチュアやプロカメラマンがすでに愛用しているカメラに取って代わるカメラだとは思っていません。むしろ、そういった方のサブカメラとしての存在です。写真を撮る道具としての完成度を高めるためのライブビューであり、サブカメラとして十分な価値を提供できていると思います。

 一方、一般の消費者に対しては、大々的にコミュニケートしてもなかなか伝わりにくい面があります。コンパクトデジカメでは当たり前じゃないか、と言われてしまいます。ただ逆に、初めて一眼レフ機を買おうとしたお客様が、ほかのデジタル一眼レフ機ではライブビューができないことを知った場合に、このカメラなら可能です、という差別化はできます。たとえビギナーでも、十分に楽しめる幅広さを持たせています。

新センサーにより総合画質バランスを向上

――ホワイトバランスを変えても、ライブビュー表示には反映しませんね。

堀田氏: E-330のライブビューは、常にオートホワイトバランスの状態になっていて、おっしゃる通り設定を変えても反映はしません。コンパクトデジカメのように、大まかにホワイトバランスの補正を反映させることは技術的には可能でした。しかし、仮に反映することをうたうなら、変数だけでも数千通りあるホワイトバランスをきちんと反映させなければなりません。それが難しい以上は、今回のE-330では表示はオートホワイトバランスという選択にしました。今後ユーザーの声を聞いて、検討する余地はあります。

――動画モードを搭載することは難しいですか?

堀田氏: ライブビュー自体が動画ですから、その指摘はすでに多く寄せられています。しかし、フルタイムライブビューモードの場合は、ファインダーを通しているため、ファインダースクリーン上にあるフォーカスポイントなどの罫書きが動画に写ってしまいます。一方、マクロライブビューではAFが働きません。また、一眼レフである以上、動画のクオリティにもこだわりを持つ方が多いであろうと考えました。未完成な動画モードを載せるよりも、今回は写真を撮る道具としてのライブビューに特化させました。動画は将来的な検討課題のひとつです。

――液晶モニターの可動方向が上下のみなのが惜しいですね。

堀田氏: 上下左右に動かすには、しっかりとしたステー(軸)を設ける必要がありますが、液晶の上には光学ファインダー、左右には操作ボタンがあり、このデザインでは大型液晶と上下左右の両立はさすがに困難でした。1.8型や2型の液晶なら可能でしたが、今回は2.5型という大きな液晶を動かすことに全精力を費やしました。

――光学ファインダーの性能については、どうお考えですか?

堀田氏: E-330では、可動液晶の厚みがある分、後ろまでファインダーを伸ばす必要があり、E-300に比べファインダー倍率が少しスペックダウンしました。またハーフミラーによって光量が少し低下しました。しかし、決して軽視しているわけではなく、何が何でもライブビューで撮るべきとは思っていません。一眼レフ機という以上は、光学ファインダーはインタフェースのかなめです。例えば、手ブレが生じやすい望遠での撮影時などは、ファインダーを覗いてしっかりとホールドすべきです。

――ライブビュー以外では、いちばんのアピールポイントは何ですか?

堀田氏: LiveMOSセンサーが生み出す画質には、大きな自信を持っています。従来までの発色傾向を受け継ぎながら、色の再現性やノイズレベルをさらに改善し、総合画質バランスはかなりレベルアップしました。

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