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携帯動画プレーヤーは第2のウォークマンかコラム(2/3 ページ)

» 2006年03月01日 00時23分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

携帯動画プレーヤーのわかりにくさ

 動画ファイルを再生できる携帯機器、いわゆる携帯動画プレーヤーに話を戻そう。筆者はポータブルDVDプレーヤーが着実な進歩と普及を見せている理由を“わかりやすさ”に求めたが、携帯動画プレーヤーが一般に定着していない理由もそこにあるのではないだろうか。端的に言ってしまえば、“わかりにくい”のだ。

 携帯動画プレーヤーはそのほとんどがコンテンツ再生を開始するために、PCとの連携を必要とする。実際の視聴に際しては、TV録画などで入手したファイルを携帯機器に適した形式に変換し、転送するという手順が必要になる。

 コンピュータスキルの高いユーザーならばまだしも、筆者の父のように「PCは使うけど、普段はネットとメールだけ」というレベルのユーザーには高すぎるハードルだ。テレビ録画予約程度の難易度まで引き下げないと、広く一般への普及は難しい。ポータブルDVDプレーヤーならば、変換も転送も必要ない。メディアをセットするだけだ。

 メーカー各社も「変換と転送」というハードルをできるだけ引き下げる努力をしており、いくつかの手段が提供されている。「Movie Hunter PVR1000」(アール・ダブリュー・シー)、「EASY RECORDER for Memory Stick DUO」(ハギワラシスコム)のようにアナログ入力された映像と音声を携帯動画プレーヤーで扱える形式へ変換する機器も存在するし、アイ・オー・データ機器のTVキャプチャカード「GV-MVP/GX2W」は録画時に携帯動画プレーヤーに適したファイル形式に録画するオプションを持っている。スゴ録「RDR-AX75」も録画した番組をPSPへ高速転送する機能を持っている(レビュー:「PSP」と「スゴ録」のいい関係)

photo “おでかけ・スゴ録”の「RDR-AX75」

 これらは手元にある映像ソースをいかに簡単に携帯動画プレーヤーへ変換/転送するかに知恵を絞った製品だが、より簡便に使ってもらうため「最初からコンテンツを対応する形式で販売する」というアプローチも存在する。iTunes Music Storeで行われているビデオコンテンツ販売は、iPodで視聴するという目的に特化するかわりに(iTunes上で見ることもできるが)、iPodで音楽を聴ける人ならば映像も見られるという“わかりやすさ”を実現している。

 しかし、あらかじめ携帯動画プレーヤー用に作成したコンテンツを販売するという行為は、コピー制御の観点から考えても一朝一夕には普及すまい。最もユーザーからのニーズが高いと思われるテレビ番組についていえば、著作権処理の煩雑さもさらに重い足枷になる。テレビ番組は、電波での放送を念頭に制作されているからだ。民放各局もネット上へのコンテンツ展開を行っているが、そのほとんどがストリーミング形式で、携帯プレーヤーへ転送しての視聴は不可能だ。

 iTMSについては日本の音楽配信ビジネスに及ぼす影響について語られることが多いが、あらかじめ対応した映像コンテンツを用意し、手間をかけずに携帯動画プレーヤーで視聴できるというユーザビリティの側面はもっと注目されて良いと思う(それだけにiTMSに国産の動画コンテンツがほとんどないのは残念だが)。

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