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HD DVDの敵はBlu-rayだけじゃない?――格安“1テラ”レコーダーは買いかコラム(3/4 ページ)

» 2006年04月03日 16時00分 公開
[浅井研二,ITmedia]

保存先を悩んでいる今も、二度と観られない番組が放映されているかもしれない

 自分にとって、保存したいという欲求は、どうやら性(さが)のようだ。その衝動は最初がピークで、回数を重ねるにつれ、勢いを落としていくものだが、それでも手を変え品を変え、保存行為を続けてきた自分がいる。たとえば、アナログ衛星放送とS-VHSビデオデッキを手にした日には、あの番組も保存、この映画も保存とテープを積み重ね、DVDソフトなるものが登場した時代には映画ディスクを買い漁った。

 いま振り返れば、それらはどれもこれも“保存版”と呼べる品質では、決してない。では、現在の欲求対象、つまり、デジタル放送番組は、はたして保存に値するものなのだろうか? これまでの経験からして、頭に“当面の間は”とつける必要はあるものの、回答としては肯定するほかなさそうだ。しかし、その手段については、明確な答えがいまだに見つからない。

 保存したいといっても、少なくとも自分は映画を残したいわけではない。以前と違い、映画はそうそう繰り返し観るものでもないと悟っているし、もう一度観たくなった場合でも、レンタルDVDを借りれば、それなりに満足できる。問題は、NHKハイビジョンで放映される風景・紀行系ドキュメンタリーや、WOWOWで流れる音楽ライブの類だ。こういった番組の中には、“ずっと”残しておきたいと思わせるものも多い。しかも、HD DVDやBlu-rayディスクでパッケージとして販売される保証はない。

 残す手段として現時点で最も一般的なのは、デジタル放送チューナー内蔵のDVD/HDDレコーダーを使って、いったんオリジナルのMPEG2-TSで録画し、その後、DVDへムーブする方法だろう。しかし、これには大いに不満がある。なぜなら、CPRMによるコピー制御がかかるからだ。別にコピーしたいわけではないが、ディスクの破損に備えてバックアップをとったり、ディスク交換の手間を省くためにPCへ取り込むということもできず、不便このうえない。

 そもそも、これはダウンコンバートにすぎないのに、である。映像品質は数分の1のレベルまで落ち、音声に関しても5.1ch AACをドルビーデジタル 5.1chに変換してくれるわけでもない。品質劣化のみならず、使い勝手の面でも妥協を強いられては、「もう結構」と言いたくなってしまう。

 CPRMがかかるのは、現在のところデジタル放送のすべての番組に「1回だけ録画が可能」(コピーワンス)という制限がなされているためだ。これはデジタルでのダウンコンバートだけでなく、アナログ入出力(S映像など)を経由して外部機器で録画する場合にも適用される(CGMS-A信号を付加)。

 デジタルコピーにおいてコピー制限が施されるのは、MD(MiniDisc)で音楽を持ち運んでいた時代に体験済みなので、特に抵抗はない。しかし、ダウンコンバート(しかも大幅な)や、アナログ経由まで制限を受けるのは、どうにも納得がいかない。

 少し余談になるかもしれないが、幸いにもうちには販売時期が古すぎて、“CGMS-Aを知らない”DVコンバーターがある。これを利用すると、コピーガードを“意図的に解除”しなくても、デジタル放送をPCへ取り込めてしまう。もちろん、その後の変換も自由なので、試しにWMVファイルへ圧縮してみたことはある。基本的には720×480のまま16:9画面となるようアスペクト比を設定し、インタレースを保持(Windows Media Video 9 Advanced Profileに設定する必要あり)してやるわけだが、720×240(16:9画面)でプログレッシブ60fps化しても、なかなか良好な結果が得られるようだ。

 しかし、いずれにせよ、元に比べれば解像感は大きく落ちるし、どうやっても映像面はアナログ経由の影響も受ける。なにより、キャプチャやエンコードの作業が面倒だ。当たり前のことだが、結局、オリジナル(MPEG-2 TS)で残せるのであれば、オリジナルで残すのがベストとなる。となると、いまが底値のようにも思える1Tバイトレコーダーに手を出すのもいいのかもしれない。

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