コラム
» 2006年04月24日 07時50分 UPDATE

小寺信良:今起こりつつあるビデオカメラの革命 (1/3)

「春はエントリー、秋はハイエンド」という従来のセオリーが崩れたかと思うほど、この春のビデオカメラは充実している。今後ビデオカメラの常識を大きく変えていく要素が数多く含まれている今年春モデルの特徴を探ってみた。

[小寺信良,ITmedia]

 ビデオカメラというのは、ある意味季節商品でもある。まず卒業・入学シーズンに合わせたいわゆる「春モデル」は、2〜3月に発売される。次は運動会シーズンに合わせた「秋モデル」で、だいたい8〜9月に発売される。

 もちろんこれらのシーズン以外にも、開発の都合でこのタイミングに合わせられなかった製品がポツポツと発売されることもあるが、大きくは年に2度、新製品リリースのタイミングが存在する。

 これまで各メーカーとも、ハイエンドモデル投入に合わせているのは春よりも秋のタイミングだった。春は入学という初のイベントに合わせて、新規にビデオカメラを購入する人も多く、エントリーモデルが中心だ。

 一方、秋は、すでにビデオカメラを持っていたユーザーの買い換え需要が高まる時期である。すでにビデオカメラのなんたるかを知っているわけだから、より機能の高いものへ買い換える。

 だがこの春、各社から発売になったビデオカメラを一通りチェックしたが、どうも今年からこのようなセオリーが崩れたのではないかと思わざるを得ないほど、充実した内容であった。記録メディアの多様化、ハイビジョンへのアプローチなど、今後ビデオカメラの常識を大きく変えていく要素が数多く含まれているのが、この春の特徴だろう。

保守的方向に舵を取るHDDタイプ

 まずメディアの多様化という点では、HDD搭載モデルの台頭が上げられる。これに関してはビクターのEverioが先駆であったが、東芝が昨年「gigashot V10」で参入し、今年は本格モデルとして2モデルを投入。ソニーも「DCR-SR100」で参入を果たした。

 面白いのは、HDD記録という新しいアプローチであるにも関わらず、各社とも揃ってビデオカメラの機能としてはコンサバティブな方向へ舵を取っていることだ。これには、ビクターEverioの昨年の方向転換が影響しているのだろう。

 Everioは2004年の初号機から2005年の「GZ-MC500」あたりまでは、従来型ビデオカメラからの脱却をはかるべく、斬新な試みを製品に盛り込んでいた。だが2005年夏に方針を転換し、一般的なビデオカメラ路線を踏襲したMGシリーズを発表。これが当たった。

 各社とも、記録メディアとしてHDDの可能性は研究していたことと思われるが、方向性を決めかねていたところはあるだろう。耐衝撃性は問題ないとしても、取り外せないメディアをいかにうまく使わせるか。その答えとして、特異性を意識させないほうがうまくいくようだ、ということがわかってきた。

 初号機では三洋Xactiのようにムービーデジカメに近い作りだった東芝gigashotも、次号機の「Rシリーズ」では大きくコンサバティブな方向へシフトしてきた。ソニーの「DCR-SR100」も、スペック的には1世代前のDVDハンディカムそのままということで、カメラそのものには同時発売の他メディア記録機ほどの革新性はない。

 HDD搭載機の宿命は、最終的には必ず他メディアへ映像を転送しなければならないということである。HDDビデオカメラは、まずそういう足かせをクリアする方向に走った。

 ソニーSR100では、パソコンに常駐ソフトをインストールすることで、カメラをUSB接続するだけでバックアップが行なわれるようにした。DVDライティングにおいては、カメラ側のボタンを押せば、一度もパソコンを操作する必要がない。まるでパソコンを外付けDVDドライブとみなすかのような割り切りようである。

 ビクターEverioの場合は、もはやPCすら必要としない。別売りのドライブを買えば、完全にPCレスでDVDバックアップライティングをやってのける。言うのは簡単だが、実際にこれを実現するのは大変な話である。なにせビデオカメラ側にUSBホストコントローラからデバイスコントローラ、オーサリングツール、ライティングエンジンなど、DVDライティングに必要なありとあらゆるものを載せなければならない。もはやビデオカメラ開発とは別次元の作業である。

 HDDが革新的な方向へ転換するのは、まずマスの市場確保したのちのことになるだろう。これまで電器製品は、最初にイノベータやアーリーアダプタといった先駆者層がマス層を牽引するという、「ロジャースの普及モデル」が生きていた。だがHDDビデオカメラは、まずマスを押さえてくいぶちを確保したのちに先駆者層へアプローチするという、逆の動きをする珍しい例となるかもしれない。

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