クラスを超えた高品位再生+iPod対応――ヤマハ 新AVアンプ「DSP-AX#59シリーズ」レビュー(2/3 ページ)

» 2006年05月01日 00時00分 公開
[本田雅一,ITmedia]
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 操作はDSP-AX759のリモコンで可能。iPodのメニューを模したユーザーインタフェースがAVアンプの映像端子から出力され、画面を見ながらiPodを簡単に操作できるところがポイントだ。

 iPodをドックに接続、再生した際には、ドック用の端子から出ているアナログ音声出力からの音声信号をAVアンプの入力として利用する。ただしMP3は16kHz以上を減衰させていることが多く、またiPodのアナログ音声は13kHz以上の音を小さく抑え込まれている。

 このため、AVアンプを通し、オーディオ用スピーカーで再生させても、どこか情報量や瑞々しさに欠ける音になってしまうのだが、ミュージックエンハンサーを用いることで音質を改善した上で再生しようというのだ。

 こうした機能は他にも例がみられるが、ほとんどの場合、その効果は実に微妙なものだ。特定のアルゴリズムを用い、高域成分を予測補完する方式を採用しており、聴感上、あまり大きな違いを感じない場合がほとんど。

 しかしミュージックエンハンサーは、基音を探しだし、その倍音をDSPで付加することで聴感上の音の豊かさを“演出”する。それはピュア的なオーディオ技術とは相反するものだが、多少の演出があったとしても、より楽しく音楽を聴けるのであればその方が良いというヤマハの考え方を反映したものである。

 このためミュージックエンハンサーの効果は“微妙”ではなく、ハッキリとその変化が誰にでもわかる。低域が豊かで高域も伸びた元気の良い、メリハリのある音になるのである。“高音質化”という方向のアプローチではないが、より楽しくiPodの音楽を聴くための機能としては効果的だ。

 楽曲タイトルやアーティスト名などの日本語を表示できない点は残念だが、音楽も聴けるAVアンプというDSP-AX759の性格を考えれば、BGM向けなど様々な意味で便利とは言えよう。

低域の力強さを得たDSP-AX759

 さて、ではDSP-AX759の音質に話題を移そう。

 DSP-AX759のハードウェア面の変更点は、ジッターを排除する高精度のロージッターPLLモジュール(パルス信号発生器)の採用と、給電を安定させる新設計のローノイズ電源回路など。加えて高品質のオーディオDACとして広く知られるバーブラウン製のDACモジュールを従来の旭化成製からの変更で採用している。アナログ音声をDSP処理する際は、ADコンバータも利用するが、こちらもバーブラウン製である(ピュアダイレクト時は利用されない)。

photo バーブラウン製のDACモジュール

 これらの効果によりS/N比が改善され、より透明感が高くシャープな音像を生み出すことに成功しているという。

 実際の音を聴いてみると、なるほど前モデルよりもスッキリとスリムな音の輪郭が浮かび上がる。バーブラウン製のオーディオDACは、中音の厚さも魅力になっているが、こちらも価格クラスから考えれば十分以上の品質だ。

 このクラスのAVアンプでS/Nの改善を図ると、どこか薄味で見通しは良いが少々つまらない音になりがちなのだが、DSP-AX759は“ほどほど”に中低域を盛り上げ、高域に音の余韻を残すチューニングが施されている。

 アナログ機器であるアンプは、機能や性能もさることながら、そのハードウェアの上にどのような味を加えるかが、気持ちの良い音を出せるかどうかの分かれ道。その方向性を正しく導くための調整が、しっかりと行われているというのが、本機の音を聴いての最初の感想である。

 さらにS/Nの改善で、やや音数が減ってしまう印象を避けるためか、スピーカーの外ではなく内側に音場を展開させ、タイトで密度の濃い音場感を創り出している点が、本機のチューニングの特徴だろう。この場合、やや狭苦しい音の印象になるものだが、中低域の適度な盛り上がりがボリューム感を補完し、具合の良い音質へとまとめ上げている。

 こうした上級機ゆずりの、きちんと“練り込んだ音”を聴かせてくれる点は、下位機種に対する明らかなアドバンテージであろう。もちろん、デジタル処理をバイパスし、映像回路によるノイズ混入を遮断するピュアダイレクトモードの存在も大きい。

 また前モデルでは、デジタル端子から入力された音に対してアナログ端子から入力された音が大きく見劣りしていたのだが、本作では両者のクオリティが甲乙付けがたいレベルにまで引き上げられている。試聴ではエソテリックDV-50sをプレーヤーとして利用したが、DV-50sの骨太な特徴ある音が、しっかりとアナログ入力端子を通じて伝わってきた。

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提供:ヤマハエレクトロニクスマーケティング株式会社
制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2006年5月31日