――メガスターのノウハウが使われているホームスターですが、その構造や原理は同じですか?
加藤氏: 仕組みはまったく同じと言って良いでしょう。これまでの家庭用プラネタリウムは、ピンホール式といって光源を覆うカバーに、星を再現する穴が開けられていました。ホームスターはメガスターと同様の光学式で、原板ソフトと呼ばれるプレートの星空を、レンズを通して投影しています。プレートは5センチ程度の大きさですが、大平さんが持つメガスターのノウハウがなければここにリアルな星空を再現できません。これまでとは桁違いの星を再現することで、天の川も本物のように投影できます。
――コンセプトや原理が同じとはいえ、家庭用に落とし込むには相当な苦労があったのではないでしょうか。
加藤氏: 大平さんが原理試作機を完成させたのは、最初にお会いしてから3カ月後のことでした。お願いしているこちらとしては、非常にスムーズに進んだ印象で、我々も驚いていました。ただ、ここからが長かったですね。
当社は自社工場を持ちませんので、開発や生産を請け負ってくれるパートナー企業探しが難航しました。これまで扱ったことがない類の製品でしたし、市場があるのかどうか分からない。時間的な制約も出てきて2003年の暮れに一旦、保留となってしまいました。
――その時に、プロジェクト自体が流れてしまったかもしれないのですね?
加藤氏: そうです。奇跡的に約半年後の2004年7月に息を吹き返すのですが、これは運としか言えないですね。まず、2003年に閉館した池袋サンシャインプラネタリウムが、2004年3月に署名活動で復活するという出来事がありました。そして7月には大平さんの最新型プラネタリウム「メガスターII-Cosmos」がお台場の日本科学未来館に常設されました。プラネタリウムの話題が続いて、社内でも「ホームスター」実現の機運が高まったんです。開発企業についても、大平さんの紹介で請け負ってもらえるところが見つかって、再スタートを切ることができました。
その後は、製品化に向けて試作機を自宅に持って帰って何度も試写をしました。回数は100回を超えますね。投影面積の大きさや、星の数、明るさなどを何度もテストして、日本の平均的な寝室にマッチする製品に仕上げました。
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