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進化した正統派スタイリッシュコンパクト――「IXY DIGITAL 800 IS」の開発者に聞く永山昌克インタビュー連載(1/3 ページ)

» 2006年05月11日 20時28分 公開
[永山昌克,ITmedia]

 最近のコンパクトデジカメのトレンドといえば「手ブレ補正機能」と「高感度モード」だ。手ブレ補正については松下電器産業のLUMIXシリーズが、高感度については富士写真フイルムのFinePixシリーズがそれぞれ意欲的な製品をいち早く発売し、人気を得ている。

 一方キヤノンは、デジタル一眼レフ機の分野では、手ブレ補正機能についても高感度についても、そもそも高い技術を持っているはずだが、コンパクトデジカメへの展開は出遅れていた。そして、満を持して登場したのが「IXY DIGITAL 800 IS」である。同シリーズとしては初めて光学手ブレ補正機能とISO800の高感度に対応し、光学ズームを4倍に拡張した製品だ。

photo キヤノン「IXY DIGITAL 800 IS」

 東京の大田区にあるキヤノン本社を訪れ、IXY DIGITAL 800 ISの開発スタッフに開発の経緯や製品の狙いを聞いた。話をうかがったのは、キヤノン DC事業部 課長の高木計人氏(商品企画全体の統括を担当)、同事業部の板羽康徳氏(商品企画を担当)、同社 DCP第一開発センター 室長の山崎康之氏(開発およびプロジェクトのサブチーフを担当)、同社 総合デザインセンター コンシューマ商品デザイン部 室長の信乃亨氏(デザインの統括を担当)、同部の高橋鋼政氏(デザインを担当)の5人である。

光学4倍だからこそ手ブレ補正が有用

――御社は、1995年に一眼レフ機用の交換レンズとしては初めて手ブレ補正機構を搭載し、その後も数多くの手ブレ補正レンズを出しています。またデジカメでは「PowerShot Pro 90 IS」や「PowerShot S1/S2/S3」など、手ブレ補正対応の高倍率ズーム機を発売しています。その技術を持ちながら、なぜIXY DIGITALにはすぐに手ブレ補正を搭載しなかったのでしょうか?

高木氏: ユーザーからの声もあり、光学手ブレ補正機構「IS(Image Stabilizer)」のIXY DIGITALへの展開は以前から検討していました。しかし、IXY DIGITALのスタイリッシュコンパクトという基本コンセプトは絶対に外せません。サイズやほかのスペックとのマッチングを考えてこれまでは見送りましたが、今回は様々な面で技術が進化し、従来とほぼ同じボディサイズのままでISを搭載できました。

 そもそもスタイリッシュコンパクトのデジカメは、IXY DIGITALによって当社が生み出し、育ててきた自負があります。また、ISの技術についても、EFレンズで最初に実現したメーカーであり、蓄積された技術とノウハウを持っています。そこで、キヤノンがスタイリッシュコンパクトの中でISをやるならこうなる、ということを強烈にアピールできる製品を作り、先駆者としての圧倒的なパワーを見せつけたいとの思いがありました。

 そのひとつが、他社よりも倍率の高い光学4倍ズームにしたことです。これまでの3倍ズームにISを入れてももちろん効果はありますが、せっかくなら一歩先の4倍ズームしたい。4倍でこそISの効果がいっそう生きると考えました。

photo キヤノン DC事業部 課長の高木計人氏

――IXY DIGITAL 800 ISのISは、これまでのPowerShot S系のISとは違いがあるのですか?

山崎氏: 基本的な仕組みは同じですが、従来は3つに分かれていた駆動系のチップを1チップにまとめたほか、ISのユニットをいっそう小型化し、体積比で約1/4を実現しました。また、レンズを支持するために3つのボールを使っていますが、そのボールの素材はPowerShot S系ではステンレスですが、IXY DIGITAL 800 ISではセラミックという違いもあります。製品それぞれの特性に応じた最適な素材を使用しています。

 ちなみに、シフトレンズをボールで支える「セラミックボール支持方式」は、他社の光学手ブレ補正機能で一般的な、軸を使ってレンズを支持するタイプ(2軸ガイドバー方式)に比べて、摩擦の影響を受けにくく、精度や応答性に優れ、小型化に有利という特性があります。

photo キヤノン DCP第一開発センター 室長の山崎康之氏
photo セラミックボール支持方式を採用したISユニット
photo ワンチップ化を実現したIS制御駆動用IC
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